内容説明
『東洋の理想』『茶の本』等の著作でアジアの、また日本の文化を顕彰した天性の詩人・岡倉天心。全身全霊で「美」と「愛」に憧れつづけて生き通した桁はずれな男の生涯をめぐる女性たち―九鬼隆一の妻・波津子、姪の八杉さだ、そして“宝石の声なる人”プリヤンバダ・デーヴィー。彼女たちとの秘められた愛と、天心の心の奥底に潜む「暗愁に閉ざされた牢獄」を描ききった評伝文学の傑作。
目次
五浦の海
根岸の里
暗愁
空蝉
ベンガルの憂愁
訃報いたる
十二万年明月の夜
著者等紹介
大原富枝[オオハラトミエ]
小説家。1912(大正元)年、高知県生れ。60年、『婉という女』で、第14回毎日出版文化賞、第13回野間文芸賞を受賞。70年、『於雪土佐一條家の崩壊』で第9回女流文学賞を受賞。90年、勲三等瑞宝章を受章、98年に芸術院賞・恩賜賞受賞。芸術院会員となる。2000年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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駄目男
17
余談だが岡倉天心は横浜生まれだが、福井藩の下級武士らしい。してみると、私の先祖とは同藩ということになるのか。ともあれ、世上言われるところの桁はずれな天心の生涯というものを知らない。評伝好きな私だが、彼のものは読んだことがない。少し勉強する必要がある。本書はインドの女流詩人、プリヤンバダ・デーヴィーとの間に交わされた、愛の手紙と、その変遷を扱ったものだが、読んだ限りでは二人の邂逅は3回、期間はたったの一年未満。愛の発火点イマイチ掴めなかった。2021/07/09
神在月
1
この作者大原富枝さんは全く存じ上げない人だったけど、個人的にかなり面白かった。社会的地位も学問もある男性のリビドーについて、女性でここまで理解しようと努めているのはすごいと思う。裏を返せばそこまで岡倉天心の魅力にはまっているということなのか。やはり天心はカリスマだな。そして寄ってくる女性をみんな不幸にする。決して美男子ではないと思うが、抗いがたい魅力があるのだろうな~。今みたいに電子メールもない時代なので出した手紙が相手に読まれるまでは一か月のタイムラグ。だがしかしその言葉たちのなんて豊饒なことか。2012/12/27
こんな本を読んだよ
1
天心は福井藩士から貿易商に転じた家の息子である。西洋騎士に「想い姫」がある如く、武士にも「想い姫」があって良い。プリヤンバダ・デーヴィー・バネルジー夫人。他に、ボストンの上流夫人、イザベラ・ガードナー夫人の名も。プラトニック・ラブは、ラブの確固たる形の一つである。2012/03/05
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