感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sayan
20
思考の速度を変え、西洋古典へ現代人を誘う本書の魅力は宮城聰の『アンティゴネ』の再解釈に明らか。NYTが霊妙で瞑想的な異世界と評しTIME誌が演劇ベスト10に選んだ彼の舞台でアンティゴネは正義や反逆を超え、神と人、秩序と情の間に呼吸する。その姿は日本的死生観=「死ねばみな仏」へ翻訳され破局の悲劇を鎮魂の儀礼へと転化する。「遅さ」と「無駄」が古典を手にする現代人の感覚を刺激しカントの『判断力批判』が語る目的なき合目的性、即効の呪縛から自由な空間を照らす。タイパ社会の呼吸を内側から鎮める禅的実践のレジスタンス。2025/10/09




