内容説明
本巻では昭和45~49年度までの5年間の講義を収載する。はじめにイスラエルの宗教伝統とギリシア哲学との交渉により形成された中世哲学にとって、啓示と理性との関係は根本的な問題であった。ヘレニズム世界とプラトン学派に見られる理性と啓示の様相を丹念に考察する。次に中世という時代と中世哲学とは何かが問われる。中世を暗黒時代とする見方は中世に関する乏しい知識と地域を限定したことに由来し、その中世観と合わせて検討する。中世哲学は2世紀から15世紀の1400年間にわたり営まれた。教父哲学は2‐8世紀に主として聖書解釈や神学で扱われ、9‐15世紀のスコラ学において哲学と神学が区別されて、論理的な洗練と体系化が行われたことが解明される。またギリシアの伝統を継ぐ理性とキリスト教の霊性とが強い緊張の中で新たな哲学として展開する姿を、ストア派のエピクテトスとキリスト教との関わりを通して考察する。さらにプラトン、アリストテレスからフィロン、アウグスティヌス、トマス以降までを射程として中世哲学に影響を与えたイデア論を考察。最後に護教家、殉教者であったユスティノスの哲学者としての意味が詳細に吟味される。
目次
中世哲学の構造(一)―中世哲学はキリスト教哲学か
中世哲学の構造(二)―ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と哲学との関係
ヘレニズム世界における理性と啓示(一)
ヘレニズム世界における理性と啓示(二)―啓示とは何か
ヘレニズム世界における理性と啓示(三)―主要なる哲学的伝統
プラトン学派における理性と啓示(一)―アカデミア派の意義
プラトン学派における理性と啓示(二)―プラトンにおけるミュトスの意味
プラトン学派における理性と啓示(三)―プラトンにおけるミュトスの意味(続き)
プラトン学派における理性と啓示(四)―プラトンにおける神託の意味
プラトン学派における理性と啓示(五)―神託の解釈〔ほか〕
著者等紹介
山田晶[ヤマダアキラ]
大正11年(1922)生まれ。昭和19年(1944)京都帝国大学文学部哲学科卒業後、大阪市立大学文学部を経て、昭和40年(1965)に京都大学文学部助教授、昭和43年(1968)に教授となる。昭和60年(1985)に京都大学を定年退職後、南山大学文学部教授、聖霊短期大学特任教授。平成10年(1998)に日本学士院会員。平成20年(2008)没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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