内容説明
マルティン・グラープマン(1875‐1949)は、中世思想の真の理解にはスコラ学の方法を知ることが重要であるとして、生涯にわたり膨大な一次史料の写本を渉猟し、その研究と紹介に努めてきた。本書はその成果を集大成した古典的名著の待望の翻訳である。本書では教父から12世紀初めのアンセルムスまでを扱う。ギリシア教父とギリシア哲学との関連をはじめラテン教父の展開、そして最初のスコラ学者ボエティウスの貢献、さらにカロリング時代の初期中世には論理学の隆盛に伴うスコラ学の発展が考察され、最後にスコラ学の父といわれたカンタベリーのアンセルムスの固有性と学問の方法を詳細に分析し、スコラ学の基本構造が明らかにされる。読者はヨーロッパの神学はもとより、哲学や思想など知性の歴史を考えるとき、スコラ学が築いてきた方法と歴史の意義を、本書によって知ることになろう。ヨーロッパ近代により主導された現代の歴史的状況を考えるためにも、スコラ学の開発した知性の方法が普遍的な意義をもっており、それは近代思想にも大きな影響を与えている。わが国の哲学研究はヨーロッパの神学に対して距離を置くが、ヨーロッパの内在的理解のために、今後は神学と哲学の強い緊張の磁場を知ることがますます重要となろう。
目次
第1部 序文(スコラ学の方法に関する現代の評価;スコラ学の方法の定義 ほか)
第2部 教父におけるスコラ学の方法の始まり(全般的序文、キリスト教と知性主義、ギリシャ哲学に対する教父の根本的態度、「プラトン主義」と教父;ギリシャ教父におけるスコラ学の方法の始まり ほか)
第3部 ボエティウス―最後のローマ人にして最初のスコラ学者(中世ヨーロッパにアリストテレス主義を伝えたボエティウス;『哲学の慰め』と中世 ほか)
第4部 教父やボエティウスに見られたようなスコラ学の方法の始まりは、スコラ学以前の時代にどのように受け継がれ発展したのか(カロリング時代とそれに続く時代の学問方法;スコラ学前夜、11世紀の神学方法の展開)
第5部 スコラ学の父カンタベリーのアンセルムス(アンセルムスの学問的独自性;アンセルムスの学問方法の分析)
著者等紹介
保井亮人[ヤスイアキヒト]
1982年香川県に生まれる。2013年同志社大学大学院博士課程修了。博士(哲学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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