内容説明
近年注目を集める「新実在論」「思弁的実在論」というトピックス。しかしこれらは単なる流行思想にすぎないのであろうか。著者は、これらの思想運動を80年代以降の構築主義的なポストモダンの延長で捉えてはならないという。ここ30年間のドイツ思想の多様な展開を概観し、科学哲学を応用した後期シェリングの『世界年代』の読解からこの新しい実在論のアイデアを提示する。各論では、「新実在論」の名付け親マウリツィオ・フェラーリスの「積極的実在論」や、「世界は存在しない」というテーゼに象徴されるマルクス・ガブリエルの「無世界観」、イアン・ハミルトン・グラントの鍵概念である「事物化されない自然」という産出性をもった力動的プロセスとしての自然観、ティモシー・モートンの「超過客体」概念による人類なき事象をも視野に入れた環境哲学などをシェリング哲学を軸に関連づけて読み解く。長年シェリング研究に携わってきた著者が、2つの「実在論」運動、それに密接に関連する工業化による大気汚染や核開発など人類による地球システムへの甚大な影響を特徴づける「人新世」の問題圏とシェリング哲学を相互に照合することでアクチュアルなシェリング読解を試みる。
目次
第1章 ポストモダンから実在論へ―問題設定
第2章 マウリツィオ・フェラーリスの積極的実在論
第3章 マルクス・ガブリエルの無世界観
第4章 イアン・ハミルトン・グラントの事物化されない自然
第5章 ティモシー・モートンの超過客体
第6章 実在論的転回と人新世
著者等紹介
菅原潤[スガワラジュン]
1963年仙台市生まれ。1998年東北大学大学院後期課程修了。博士(文学)。現在日本大学工学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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