内容説明
本書の第1部「文化交流をひらく」では、歴史的背景の異なる極東、極西、ユーラシア大陸の史資料や文物などから文化交流の問題を考察した8論文を収める。第2部「戦争と平和、しるしとテクスト」の7論文では、ヨーロッパと極東(主に日本)の比較論的見地から、中世における文化交流のさまざまな様態に関する考察が示され、多種多様な中世の世界観を示唆している。中世史の再検討を通して、国の枠組みを超え多様性や文化の共存などを重視する「グローバル・ヒストリー」の時代の新たな異文化交流の書。
目次
1 文化交流をひらく―「東洋」「西洋」「東洋‐西洋」(矢代幸雄と大和文華館の設立―文化交流の場としての美術館;中国・宮廷コレクションと東アジア文化の生成―南宋復興秘閣の成立と江南仏教世界の変容;文化交流としてのキリスト教への改宗?―中世の事例と比較に向けた視座;中世日本人の異国観;窓としての図書館―西方のブルゴーニュ公と東方の魅惑;英仏間の和平を求めて―ジョン・ガワーとフィリップ・ド・メジエールの教訓的書簡;13~14世紀のイタリアで書かれたフランス語―人口言語,混成言語,あるいは接触言語?若干の事例から;マンドレイクの採取法―ヨーロッパ・中東・中国における知識の往還)
2 戦争と平和、しるしとテクスト―比較史の試み(一揆/盟約―中世日本とヨーロッパにおける共同体の言語と表象;「日本紋章学」と決別するために―日本の家紋と西洋の紋章:標章比較研究の一例;西欧と極東における印章―美術史学からの比較の試み;騎射に見る日欧の中世軍事文化の比較―戦い方と身分の表象;比較史における宗教と戦争―「長い中世」の日本と西欧;『ローランの歌と平家物語』―比較研究の可能性について;中世における東洋の教訓物語―データベース「中世教訓逸話集シソーラス」による索引化のための批判的・比較論的アプローチ要素)