内容説明
1860年、オスマン帝国統治下にあったシリアの中心都市ダマスクスで発生した宗派抗争事件は、多くの犠牲者と広範囲にわたる商店や家屋、宗教施設の破壊という甚大な被害を出した。この事件は、これまで必ずしも正面から扱われてこなかったが、本書は、事件関係者の回想や記録文書など多くの一次史料を収集し、事件の政治的・外交的側面だけでなく、宗教的・社会的側面にも光を当てる意欲的な研究成果である。付録として、未だ写本しかないアラビア語史料の中から重要な二作品を初めて校訂・翻訳し、収録する
目次
序章 歴史的シリアのキリスト教
第1章 事件の背景と概略
第2章 身辺の備忘が史書になるまで―ミーハーイール・ミシャーカ
第3章 ある司祭の殉教―ユースフ・アッディマシュキー
第4章 故郷を捨てて故郷を憶う―アルビーリー父子
第5章 イスラーム教徒名望家の見た事件―ムハンマド・アブー・アッスウード・アルハスィービー
第6章 キリスト教徒を救ったムスリム―アブド・アルカーディル・アルジャザーイリー
第7章 処刑されたダマスクス総督―アフマド・パシャ
第8章 事件のその後と終わらぬ問題
結語
著者等紹介
若林啓史[ワカバヤシヒロフミ]
1963年北九州市門司区生。1986年東京大学法学部卒業・外務省入省。シリア(1987‐89 アラビア語研修)、連合王国(1989‐90 Senior Associate Member,St.Antony’s College,Oxford University)、イラク(1990‐91)、ジョルダン(1991‐92)の日本大使館、外務本省、山梨県警察本部(2001‐03 警務部長)、イラン(2003‐06 参事官)、内閣府国際平和協力本部事務局(2006‐09 参事官)を経てシリア(2010‐13 公使)、オマーン(2013‐15 公使)、イラン(2015‐16 公使)の日本大使館で勤務。2016年より東北大学法学研究科教授。2019年より同大学客員教授。著書に『聖像画論争とイスラーム』知泉書館2003年(第1回パピルス賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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