内容説明
戦後の日朝関係についてはその社会的重要性にみあう十分な研究が行われてこなかった。北朝鮮の側に立つ特定の見解や興味本位の議論が多く、分析的な考察はとぼしかった。本書はそれらの限界を越えて〈対日工作と物資調達〉という新たな視点から膨大な資料群を駆使し、北朝鮮がわが国とどのように関わろうとしたかを明らかにする。工作とは暗殺、破壊活動、拉致、各界有力者の抱き込み、直轄組織の構築などが主要な任務である。このうち本書では政財界やジャーナズム、反政府活動家、公共団体職員、市民などの抱き込みと、主として直轄組織である朝鮮総聯の活動を分析する。また物資調達については、核・ミサイル開発に限らず北朝鮮の国家戦略の根幹をなす軍事工業全般に関わる問題を考察する。とくに精密機械や高品質素材の調達による先端技術の移転と、多くの民生品が兵器製造に転用されたことを重視して、その技術的転換の実態を解明する。本書の発掘した多くの知見は、「国家の安全保障」を再考するうえで有益な示唆となろう。
目次
第1章 ソ連の対外物資調達と工作、1928‐56年
第2章 北朝鮮、戦前~1950年代
第3章 在日朝鮮人運動と工作の組織化
第4章 第1次7か年計画と対日物資調達
第5章 1970・80年代の戦略と展開
第6章 金正日時代の物資調達
補論 樹脂と油脂
著者等紹介
木村光彦[キムラミツヒコ]
東京都生まれ。北海道大学、大阪大学、ロンドン大学で学ぶ。名古屋学院大学、帝塚山大学、神戸大学に勤務。現在、青山学院大学国際政治経済学部教授。東アジア経済専攻
安部桂司[アベケイジ]
福岡県生まれ。工学院大学で学ぶ。通産省東京工業試験所、同・化学技術研究所を経て、同・物質工学工業技術研究所主任研究官、化学技術戦略推進機構研究開発事業部つくば管理事務所所長を歴任。化学専攻。朝鮮・満洲の鉱工業史の研究に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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