内容説明
『大論理学』の後に書かれたもう一つの主著である『七巻本自由討論集』の全訳註解。1巻ずつ全体を7冊に分冊して刊行する。『大論理学』訳註の達成を踏まえ、論理学から存在論、自然学、認識論、倫理学、神学にわたるオッカム思想の全貌を見通せる本書の註解に挑む。原典はオッカムに対するさまざまな批判に応える形で展開されるが、当の批判者の言説は紹介されておらず、本文を読むかぎりでは正確な理解は困難である。註解者はその議論の相手を特定しその説を詳細に調べ、注のなかでその原文を示すとともに、議論全体の文脈を丁寧に解説することにより、オッカムの真意が理解できるよう工夫した。なお、全巻目次とともに各テーマがどの巻に掲載されているかを一覧できる内容目次を付した。本書の本格的な訳註をとおして、中世から近世への思想的転換の実態が一層明確になるであろう。
目次
神が万物を知性認識し、万物の直接的作動因であると仮定する場合、このことによって、神が内包的に無限なちから(infinita virtus intensive)を有することが論証されることができるか
神の諸属性は概念において区別されるか
神の本質が、或る属性の特質のもとで、神における生みを引き起こす根源であるのか
神は自己以外のすべてのものの作動因であるか
諸元素は混合物体の内に存続するのか
動物の身体の諸器官の部分、例えば肉や骨の形相は種において異なるのか
一人の信仰者の知性の内に、数においてただ一つの信仰のみが存在するのか
すべての判断する活動(actus assentiendi)は複合されたもの(精神の中の命題)を対象として持つのか、あるいは非複合的なもの(外界の事物)を対象として持つのか
希望(spes)は、信仰(fides)や神への愛(caritas)から区別された徳であるか
聖なる処女マリアが原罪のうちにただ一瞬の間留まったということはありえたか〔ほか〕
著者等紹介
渋谷克美[シブヤカツミ]
1948年生まれ。金沢大学大学院文学研究科修士課程修了。京都大学博士(文学)。1991‐92UCLA(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校)客員研究員。現在愛知教育大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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