出版社内容情報
従来のフッサール研究は初期から中期の著作を中心に彼の理論的・論理的思惟の一貫性を強調することに主眼をおき,感情や衝動といった内面的な意識現象は単なる付随現象とか非合理なものとして,本格的に考察されてこなかった。これはハイデガーやアンリ,レヴィナスなどでも同様である。
しかしフッサールの膨大な遺稿が刊行されるのに伴い,とくに中期から後期にかけて彼が多様な感情の働きや衝動的行為について分析しており,その成果を無視することができない状況となった。
本書は著作とそれを背景で支えている遺稿における思惟を整合的に読み解くことを通して,フッサールの全体的思惟を理論的・論理的現象学から感情現象に裏づけられた実践的現象学への展開として再構築する試みである。
現象学が客観的考察に終始するのではなく,現象学的還元を通した現象学運動として,認知科学や脳神経科学などの諸科学の成果を導入しつつ展開する可能性を示唆した意欲的作品である。
稲垣諭[イナガキ サトシ]
著・文・その他
内容説明
従来のフッサール研究は初期から中期の著作を中心に彼の理論的・論理的思惟の一貫性を強調することに主眼をおき、感情や衝動といった内面的な意識現象は単なる付随現象とか非合理なものとして、本格的に考察されてこなかった。これはハイデガーやアンリ、レヴィナスなどでも同様である。しかしフッサールの膨大な遺稿が刊行されるのに伴い、とくに中期から後期にかけて彼が多様な感情の働きや衝動的性為について分析しており、その成果を無視することができない状況となった。本書は著作とそれを背景で支えている遺稿における思惟を整合的に読み解くことを通して、フッサールの全体的思惟を理論的・論理的現象学から感情現象に裏づけられた実践的現象学への展開として再構築する試みである。現象学が客観的考察に終始するのではなく、現象学的還元を通した現象学運動として、認知科学や脳神経科学などの諸科学の成果を導入しつつ展開する可能性を示唆した意欲的作品である。
目次
1 意識の志向的分析における感情の位置づけ(志向的感情;非志向的感情 ほか)
2 感情体験と明証性(絶対的所与性としての感情体験;感性的ヒュレーと時間意識 ほか)
3 自我の存在と受動的綜合(自我の問いの位相;作用の遂行極としての自我 ほか)
4 感性的感情と意識流(感性的感情の事象的布置の再確認;感性的感情の客観化のパラダイムからの解放 ほか)
5 衝動と普遍的目的論(先時間化の分析とその否定;現象学する自我と絶対的時間化 ほか)
著者等紹介
稲垣諭[イナガキサトシ]
1974年、北海道生まれ。青山学院大学法学部卒業、東洋大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程修了。文学博士。現在、東洋大学「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ、ポストドクター、同大学非常勤講師。専門は、哲学、現象学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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