目次
1 グローバルな「人権」言説と個々の生(近代国家における幸福追求の構想;潜在能力、人間の安全保障、人権 ほか)
2 「文化」を語ることの困難―文化相対主義をめぐる議論(反=反相対主義―文化相対主義VS.啓蒙主義?;文化相対主義のパラドクスと人類学の再帰性)
3 「市民社会」における「文化」の語り手―多文化主義的政策と戦略的本質主義(「文化」の語り手としてのネイティヴ人類学者たち;文化の戦略的表象―先住民運動、「民族ナショナリズム」)
4 文化相対主義と普遍的「人権」概念―理念的二頂対立ではなく言説の政治的機能へ(「人権」概念の有用性はどこにあるか?;女性割礼(FC/FGM)と「人権」言説 ほか)
5 再び、「文化」を語ること―運動としての文化人類学(文化とともに生きる人びとのリアルな姿を描く;人類学的介入の可能性)
著者等紹介
白石壮一郎[シライシソウイチロウ]
2007年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程研究指導認定退学。現在、関西学院大学大学院社会学研究科特任助教、関西学院大学社会学部非常勤講師、近畿大学農学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
4
「デロリアjr.は、それまでの北米人類学者の研究が…有害でさえあったとし…居住区に入ることに強い疑問を呈している…学者の知的搾取批判にとどまらず、北米の歴史の見直し議論も生まれている。アメリカ先住民は、11世紀からイロクォイ六族連盟などの独自のNationsを形成していたが、このイロクォイ連盟の構成が、合衆国の憲法制定時に強い影響を与えたとする説がある。合衆国建国二百周年だった80年代終盤をさかいに、こうした影響を強調するネイティヴと人類学者と、それに反対する人類学者との間で平行線の論争が繰り広げられた」2023/08/12
onisjim
1
先日白石さんと話をした際に「買ってくれよお」と言われたので購入。薄くて読みやすいのだけれども、扱っているのは文化相対主義のアポリアとでもいうべきもの。そしてたとえば女性割礼という慣習に対して、文化の尊重かさもなくば女性の権利かといったステレオタイプな二項対立で語るのではなく、いかに対話を形成し、あるいは参与・介入していけるだろうかという厄介な問いである。どうすりゃいいんだこれというヘヴィさがあるが、学部生のテキストとしてだけではなく、一般読者が手にとって悩んでみるのも悪くないと思う。2015/05/14