内容説明
祈りの心は果てしなく言葉から遠ざかってゆくのだろうか。「現代社会の言葉が、自分の知っている言葉とはちがう」という不安と、「それでも」という決意に揺れながら。二〇二〇年の終わりから二〇二四年の初めまでの四六八首を収めた第十六歌集。
目次
アプリと穴
フロックコート
豆乳鍋
はんかち落とし
合鍵
ニボラー
スプーンにすくふスープ
月組さんの動画
象の移動
オンライン会議
化学式
きつねうどん
真冬のシンフォニー
雨虎
よみがへり日和
蜆
どんな声で
ベビーカーはさくらの下に
はるかなる虹
真夏のひかり〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
29
敬愛する歌人、小島ゆかりさんの最新歌集。前作「雪麻呂」がとても良かった。本書は日常詠に挟み込まれた時事詠がとても良い。 反戦ははるかなる虹見えながら指さしながらだれも触れず/早春の空のましろの雲はゆき誰かの死後の時間はじまる/抑止力めざし大量殺戮の化学兵器をつくりしノーベル/裏声をこまかくつかふ歌ばかり流行るねドラッグストアみたいな/敵基地攻撃能力保有つて、攻めていいつてことだねつまり2024/07/29
あや
24
再読。最近短歌同好の仲間で話題になったので。時事詠もさることながら日常詠も良い。ねこ様、お孫さん、お嬢様のご結婚…年齢を重ねることで起きるライフイベントが小島ゆかりさんならではの詩情を持って詠まれる。「はるかなる虹」というタイトルは反戦を詠んだ歌から取られたタイトルである。平穏であるような日常には一方でまだコロナもあり、今年のお正月の能登の震災があり、戦禍があり、そういうものを心の隅につねに意識して生きていくことの大切さを思う。 なんといふ夢見る顔をするものかこの青年と語る娘は2024/10/01
門哉 彗遙
6
目線やその捉え方が素敵でした。 付箋を挟んだ12首。 風はむかし樫の木、樫はそのむかし旅人、旅人はただかぜ/ ここに死ぬ枯蟷螂は思ひつつここはどこかと問ふこともなし/ 潔きもの群鳥のなかの一つ鳥ひとつひとつを隠す群鳥/ 火のようなもみぢの下を 最後かもしれない 母の手をとりて行く/ 寅のとし幸はふならんわが家には黒とら柄の猫二匹をり/ どこかとほくの街をバイクは行くごとしあをい夜明けのなかで聞くとき/ 熟睡はいのちのしろい時間なりひもすがら天にもくれん浮く日 2025/05/25
門哉 彗遙
3
目線やその捉え方が素敵でした。 付箋を挟んだ12首。 風はむかし樫の木、樫はそのむかし旅人、旅人はただかぜ ここに死ぬ枯蟷螂は思ひつつここはどこかと問ふこともなし 潔きもの群鳥のなかの一つ鳥ひとつひとつを隠す群鳥 火のようなもみぢの下を 最後かもしれない 母の手をとりて行く 寅のとし幸はふならんわが家には黒とら柄の猫二匹をり どこかとほくの街をバイクは行くごとしあをい夜明けのなかで聞くとき 熟睡はいのちのしろい時間なりひもすがら天にもくれん浮く日 2025/05/25
W
3
「若者の歌をはげまし若者に胃をはげまされ青葉の五月」2025/04/19
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