内容説明
新文庫シリーズ、短歌研究新人賞受賞者の名作第一歌集を新装幀で。
目次
1(助手席;セロファンの鞄;ヘアピン・ピアノ;愛なんて言う;マクドナルド ほか)
2(歌未遂;立葵;短銃;わたくしの切り取りかた;間奏なし ほか)
著者等紹介
野口あや子[ノグチアヤコ]
1987年、岐阜市生まれ。本歌集で第五十四回現代歌人協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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水色系
16
繊細さのめだつ歌集。真夏日のビッグマックを食むきみをとおい光のように想った(P33)/嫌なんて言わせないままくちづける杏仁豆腐色のあなたと出会う(P46)/パレットを洗えば色はとりどりに解れ流されあなたと出会う(P83)/もういいね許していいね下敷きを反らせてみたら海に似ている(P88)/くびすじをすきといわれたその日からくびすじはそらしかたをおぼえる(P94)/手帳から静かにはがすプリクラの糊ねばついてやがてかすれる(P106)/塗りすぎた軟膏を削ぐそんな夜があなたにもきっとあったのだろう(P128)2024/11/28
qoop
6
生臭い感情の抜け殻のような外殻をそのままに留め、中身を歌として昇華させたかのような読み心地。匂いの残滓を感じさせる生々しさなのに漂白済みの血痕。エロスとリリックの際を進む様な文字列。本書の活字、特に〈ろ〉の下線は止まらず中央から左下に落ちていきそうで、その不安定さが内容とよく合う。/君の骨のひとつに夢中になるころは腐れむらさきおちろ夕暮れ/身のうちに猫を棲まわす女子生徒ばかりが集う午後の保健室/どこまでの手術をしたかなんてこと尋ねられずに如月のころ/伽藍とて恋をするのだ靴下で踏む床板がきしきしと鳴く2024/06/27