出版社内容情報
2010年から2019年までの
短歌作品346首を収録
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちぇけら
24
燦々と星はそそいでandymoriが解散した年きみと別れた。吹き抜けのように、真夏のなかできみはシャンプーのかおりをまとってフェンスに凭れていた。右手にぺプシの缶を握りしめ、僕とペプシだけが汗をかいていた夜だった。きみはつるりとした顔で3つ上の先輩にキスをする。僕はそれをスローモーションのように目にする。痛みは遠く鋭くやってきて、坂道を自転車でかけおりてから、どくだみの花を摘みとった。不釣り合いな感情を持ったまま僕はいくつか歳をとって、傷というにはあまりに青春すぎる日々を、ときおり思い浮かべる。2020/10/02
太田青磁
9
ヘアムースなんて知らずにいた髪があなたの指で髪型になる・二回着て二回洗えばぼんやりとわがものになる夏服である・乗るたびに減る残額のひとときの光の文字を追い越して行く・灯台と教える声が遠ざかるもらい煙草の度が過ぎている・ねむるあなたの苗字をぼくの字で書いて再配達の書留をもらう・桃ひとつ別けてもらった青果店の袋を提げるランタンのように・回送電車の窓はひかりを曳きながら合図のように繋ぎなおす手・なれるなら夏のはじめの夜の風きみのきれいな髪をかわかす・冷えた身の芯まで湯気をかぎながら柚子になり湯にしばらくひたる2020/09/12
あゆみ
7
照らし方だ。劇的な経験だけがものを言うわけではない。 目に映るものや、心に留まること、肌に触れるもの、それらに、自分の言葉を尽くすこと。言葉数という意味ではなく。そこに、その人の視線があるという、当たり前だけど、かけがえのないこと。 それが感じられるって、すごく素敵だ。2020/05/31
すずき
6
早稲田短歌会出身で『未来』の若手である山階基さんの第一歌集。カバーはなく裸本の上に直接帯の装丁。150頁ほどと薄いがみひらきに6首あるので密度は濃い。名詞濃度がうすいふわっと掴んで持って行ってしまうような歌の数々。総合誌の新人賞を受賞することなく佳作から次席まで軒並みとっているのでそろそろ選考委員に匿名原稿でも看破されそう でも新人賞はべつに取らなくてもいいんじゃないかなと何となく思う とってくれたら嬉しいけども2019/08/04
グワカマーヨ
3
読んでびっくり。これは私が詠んだ歌かしら??と思うくらいにそのまんま自分の心が31文字に収まっている。すごいなー。こんな歌が詠みたいなー。2019/11/05