感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
70
花山多佳子氏の2016年の歌集。2008~12年までの425首を所収。作者らしい繊細な作品から父・玉城徹の逝去、突如として起きた東日本大震災を詠ったものまで端正ながら内に秘めた強さを感じさせる。《筆談をせむと思へどリア王のごとくに父は目を閉じてをり》《きのふを思ふといふことの全てもはや連続せず2011・3・11》《いい思ひの中で死にたい 避難所に絵を描きながら男の子言ふ》《地図に見ては生死を思ふ 投稿歌と名のみに馴染みになりたる人びと》《ことごとく生きてゐる人、生きてゐる人だけがどつと電車を降りくる》2024/09/10
Cell 44
1
描かれる景物は心あたりのあるものながら、それを描く言葉にある種の凹凸、ざらつき、けばけばしさが見られて、ユーモアが生まれる。歌の調子自体は真面目だが、短歌の定型自体が内包する言葉に対して相対化の兆しとなっているような気がする。2017/08/28