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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
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#黒瀬珂瀾 #短歌 満月をブリティッシュエアよぎりたり髪の擦れ抜けし後頭部を抱く #返歌 三日月にブリティッシュテレコム督促が真白き紙に原稿書けず2017/01/13
はち
8
ダブリン、そしてロンドンへ。この歌集のほぼ全てがこの異国で過ごした記録でもある。海外詠だけであるならばまだしも、妻の出産、子供の成長(あの、4歳児さんだ)も含まれ、さらに異国で聞く東日本大震災。非常に重層的な歌集。前半は日本語や日本に対する考察の歌が多いが、後半は家族で生きる英国である。詞書の多さが特徴。時折ヲタ的なものも見られ、奥さんも大変やなぁ…などと余計な心配をしてしまう。黒瀬さんはその後福岡へ。最後の歌は映画のラストシーンのようでもあった。玄界灘 この一面のまばゆさにオデュッセウスの背は溶けゆく2015/11/21
Kaoru Murata
5
まあ、ともかく大したものです。異国で出産する奥様も頭が下がるが、父親業に徹した黒瀬さんも他人がまねできるものではない。ただ日常を綴るのみならず、文学、哲学、もろもろの知識を備えないと背景まで読み解けないだろう。一首一首に日付とともに丁寧な詞書がついている。/旅とは旅のはじめに帰れざることかアポロ十号見上ぐる亜児よ/俺はおまへの汽車になれるか女王の鼠色の兵を通りて帰る/眠りたる頬に浮かびし児の笑みのやうに去りゆく秋のひと日は/夢を見て生くるは罪か 白きカモメ真白き崖に溶けゆく朝を2016/02/26
浦和みかん
4
異国に住んだ一年と一月の歌日記。異国性に加えて奥様の出産や遠い日本の震災などもあって物語としても面白い。ほとんどの歌に詞書がついているが、それぞれの距離感が絶妙で、詞書を読まされている感じがなくてよかった。2016/04/30
紫苑
3
帯に「多民族が集う土地での子育て。異文化の中で過ごした十三ヵ月。」とある。ダブリンからロンドンへ、一行日記でもあり、もちろん歌集でもある。最大の変化である子の誕生と成長を中心に、異国人として体験する祝典や暴動、国際問題、異国で体験する東日本大震災が、リアルな時間感覚とともに詠われており、一気に読み進んだ。他民族といっても自らが「永住」するわけではないからだろうか、身近な体験にも、政治・国際問題にも、ある種の距離感、冷めた目が感じられる。2016/02/28