感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
9
「醇堂叢稿(じゅんどうそうこう)」という書物があるそうです。全45巻とか。旧旗本であった大谷木醇堂という人が、明治半ばになって綴ったさまざまな原稿の総称なのだそうな。いってみれば、爺さんのつれづれエッセイ。これを元に、江戸時代の旗本、つまり官僚予備軍たちの生活をヴィヴィッドにまとめたのがこの本。厳しい生き残り生活をリアルに語ってくれます。「おさそい」、「御宅」という言葉、カツラのこと、足袋のこと。面白い、というより興味深い本ですね。続巻が出たら買いたい。2012/07/09
Humbaba
4
問題を起こさない。それはそれで良いことなのだが、問題を起こすというのは力があるということでもある。確かに問題ばかり引き起こすようなグループは扱いが難しいが、そのような組織の中でこそ規格外の優秀な人間が育つというのも一面の事実ではある。問題を起こさせないように縛ると、角を矯めて牛を殺すことになりかねない。2013/10/08
唐橋史(史文庫~ふひとふみくら~)
3
丁寧に史料を読みとくことによって明らかにしていく名もなき幕臣たちの日常と、幕府のバックヤード。そこには倫理観と使命感を抱く時代劇のヒーローは存在しない。そこには甘えと馴れ合いで疲弊した官僚たちの世界が展開され、無気味なほどに現代と同じ病理を抱えている。幕末の就活ともいえる「対客登城前」に至っては、現代を凌ぐストレス社会のありようが見えてくる。「組織の金属疲労」ともいうべき機能不全障害は、組織にとっては避けられない宿命なのだろうか。内側からも幕府倒壊の一因が見えてくる。2013/03/09
連盟
2
旗本の日常業務の慣例や、事件、エピソードなど、ほとんど知られていない興味深いエピソードが多く採り上げられている。大谷木醇堂『醇堂叢稿』はかなり深い史料と言えそうです。2016/07/28
紫暗
2
タイトルにあるように江戸時代の旗本御家人たちの日常がどんなであったかを教えてくれる一冊。時代劇や時代小説ではお目にかかれないような当時の常識や、現代にも通じるような社会問題などが取り上げられていてとても面白かったです。武士の社会はうまくできているところもありながら、やはり問題も抱えていたのだということがよくわかりました。武士社会のイメージが少し変わる内容です。2013/02/16