内容説明
命を賭して密教を唐から持ち帰り、帰国後、日本の仏教をリードしていった空海。空海ディレクションのもとにつくられた東寺講堂の立体曼荼羅は、空海の目指した密教空間として現在も唯一無二の存在感を示している。一方、空海の伝説は各地に伝わるが、実際はどうだったのか?豊富な密教美術の紹介や読み解き方を入り口として、空海の実像、その思想までを理解する。
目次
はじめに 空海と密教美術・入門
第1章 密教美術から空海を読み解く
第2章 密教は仏教のなかでどのような位置づけにあるのか
第3章 空海は密教をどうして取り入れようと考えたのか、密教は日本でどのように広まったのか
第4章 史実から迫る空海の実像
第5章 空海の思想とはどのようなものなのか
第6章 知っておきたい空海の名文とその背景
著者等紹介
武内孝善[タケウチコウゼン]
1949年、愛媛県生まれ。1977年、高野山大学大学院博士後期課程単位取得退学。この年より2年間、東京大学史料編纂所に内地留学。1979年から高野山大学文学部講師・助教授などを歴任し、現在教授・副学長。博士(密教学)。文化庁文化審議会専門委員(文化財分科会)
川辺秀美[カワベヒデミ]
1968年横浜市生まれ。高野山大学大学院修士課程密教学専攻。立教大学文学部ドイツ文学科卒業。株式会社スカイライター代表取締役(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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moonanddai
8
久しぶりで空海に戻ることができましたW。曼荼羅の意味、如来、菩薩、明王等々がそこに描かれている意味、そして空海の思想など、密教をもう一度考え直すことができました。中でも残ったことは、空海の渡唐の意味。つまり「虚空蔵求聞持法の実修によって体感された強烈な神秘体験」つまり有名な「明星口に入り」が如何なる世界であったのかを、唐まで行って知ろうとした。そしてそれが密教であり恵果和尚であったという説があると…。一般に流布されている説とは多少ニュアンスは異なりますが、私としては納得しました。2021/07/27
肉尊
6
『性霊集』では「この宇宙の根源であり、この宇宙そのものを仏さまとみなす大日如来は、我々の心に本来備わっている」という。本当の智恵の世界が顕現した状態が密教における成仏であり、輪廻転生を繰り返さずとも即身成仏が可能である。空海の生涯とその思想を平易な語り口で伝えてくれる良書。著者は即身成仏について、本来的に仏と同じである「私」に気づき、本来の「私」に完全に帰ることだと捉えており、腑に落ちた気がする。2019/11/28
さくら
1
タイトルからは芸術に特化した内容を想像させるが、実際は「密教入門書」。密教美術に関する項目は序盤のカラーページに集約されており、あとはほとんど密教とは、空海とは、に徹底している。そのうえ、今まで読んだ密教入門的な書物のなかでも圧倒的に分かりやすい!初心者のわたしでも理解に易しく書かれているのでぜひとも密教をこれから知りたいという方に読んでいただきたい。2015/09/16
ArcCosine
1
密教美術を通して、密教そして空海を理解するための足がかりを作る本。仏教に関してはど素人なのですが、小乗仏教と大乗仏教の違いが分かりやすく説明されて良かった。密教(小乗仏教)は自分が仏になるための道で、自分=世界=仏になり、悟りから救いをというもので、大乗仏教はみんなで仏を目指そうという物。いずれにせよ、救われる為に努力するのは変わらないという点だけは理解出来た。曼荼羅の解説も興味深かった。もっと勉強しないといけないと感じた一冊。2014/01/29
おくだ せいや
1
これで空海展の予習ばっちりや!入門書とうたっているだけあって比較的読みやすかった。が、やはり全く知識がないと難しかった…2011/08/06