内容説明
著者は、彷徨の果てに幻影としての日本を見た倭建命、出発も到着も奪われた「くらい」小説を書き続けた徳田秋声、覗き穴の向こうに彼方を見出した永井荷風らの彷徨に家郷を見る。「みやび」を「離宮」に囲った後水尾院と、その美意識を受け継いだ荻生徂徠、本居宣長に対し、連鎖、生成、流離としての「日本」を再興し、過程としての古典を認識するための新しい国学を求める。西欧と対峙して文明開化に絶望した横光利一、「何処でもない場所」への情熱につかれたモダニストとしての保田與重郎、そしてモダニズムの帰結としての日本を追求した萩原朔太郎らの凝視した、「虚妄としての日本」を見据える。三つの小説論、古典論、批評論から、「日本」が顕れる。三島由紀夫賞受賞作品。
目次
第1章 日本の家郷―彷徨の様式としての近代小説 小説論
第2章 生成する日本―文学という離宮 古典論
第3章 虚妄としての日本―モダニズムの地平と虚無の批評原理 批評論
著者等紹介
福田和也[フクダカズヤ]
1960年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授。文芸評論家。著書に『甘美な人生』(新潮社、ちくま学芸文庫、平林たい子文学賞受賞)、『地ひらく』(文春文庫、山本七平賞受賞)、『悪女の美食術』(講談社、講談社エッセイ賞受賞)など多数。『日本の家郷』で、三島由紀夫賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読書の鬼-ヤンマ
1
2009年1月22日初版発行、図書館本。題:日本の家郷。故郷、郷里と言わず”家郷”という福田和也氏。P4:萩原朔太郎の著書”氷島”に”家鄕"アリ。家:人と人との繋がりと離別、血の繋がりの有無はともかく縁と思想で繋がる世界を独自の視点で快説。使用する文言一つ一つに福田氏とは何者か?を感じる本書。書以外の絵画の世界も評する。画家・長谷川利行、柏木如亭、高橋由一等の筆絵、福田氏独自の解釈で知るが、彼らの絵をネットで知る強い衝動に駆られた。PS.読中の”作家の値打ち"は衝撃。2024年9月20日、63歳没、合掌。2024/10/17
nokaisho
1
福田和也の出世作だが、新書化されて初めて読んだ。 「近代小説=彷徨者の様式」の図式を(徳田秋声らと同様に)永井荷風に当てはめるのは少し呑み込むのに閊えがあった。批評論「虚妄としての日本」は横光利一から始めたことでイロニーの説得力を上げるのに成功していると思った。 著者の問題意識は今でも私の中心にあるものと感じた。解説にもある通り「ロマン的イロニー」なので必ず負けるのではあろうけど。2017/12/10
sk
0
概念を外側から攻めて行ってる感じ2012/10/31
みろり
0
難解(名)2010/08/14