内容説明
著者にとって大きな研究課題であった日本中世の宗教と経済活動の不思議な関係。高校教諭時代の教え子に、「なぜ平安末・鎌倉時代にかけてすぐれた宗教者が輩出したのか」と問われて30年。網野は、『蒙古襲来』『無縁・公界・楽』『日本中世の非農業民と天皇』等々と話題作を次々と世に送り出してきた。その研究の過程で見えてきたのは、「無縁」の極地にある貨幣の存在、「神」へ捧げる利子といった「資本主義」の源流ともいうべき世界だった。経済活動と宗教者との関わりを解明し、中世社会の輪郭を鮮明に描いた秀作。
目次
1 境界(境界に生きる人びと―聖別から賎視へ;中世の商業と金融―「資本主義」の源流;市の思想―対談者・廣末保氏)
2 聖と賎(中世における聖と賎の関係について;中世における悪の意味について)
3 音と声(中世の音の世界―鐘・太鼓・音声)
4 宗教者(一遍聖絵―過渡期の様相)
著者等紹介
網野善彦[アミノヨシヒコ]
1928年山梨県生まれ。専攻は日本中世史・日本海民史。都立北園高校教諭、名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学部教授、同大学経済学部特任教授を歴任。2004年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
9
「アフリカのモシ族では口頭の世界で行われていることが、日本の場合、文書の世界で行われるようになっている。確かに日本の社会には、とても深く文字が浸透しておりますが、これは古代以来の国家の運営が、徹底した文書主義であったことが大きく作用している。そのために、口頭で行われていた貴人と復唱者の関係までも、すべて文書化してしまった、ということ…このように貴人、いわば聖なる存在が、微音でしかその意志を語らなかったとすれば、復唱者の高声は、そういう聖なる者の意志を俗界に伝える…境界的な音声ということができると思います」2018/03/14
nobinobi
1
商品の交換は、境界的な空間で行われていた。一旦、商品を神のものとすることで、交換者同士の強い絆が生まれ、交易が成り立たなくなるのを防ぐためである。それが、室町期以降になると、商品と商品の間に銭が入るようになり、境界的な空間が交換に持つ意味合いが薄れていった。2017/08/31
うれしの
1
「無縁・公界・楽」の前書きに書かれていた「一言の説明もなしえなかった三十年前の高校生からの質問」に対して、「どうやら見えてきたように思われるこの問題の私なりの『解決』への展望」がまとめれた「あとがきにかえて」が感動的。保立先生の解説もよい。2016/01/31
いせやん
0
「もののけ姫がより面白く観られる」と聞いて。室町における「近代化」によって、遊女や病人が差別の対象としての地位を確立した(っていのも変な言い方だけど)という話が興味深い。講演録や記事の加筆修正を集めたものなので、若干読みにくい気もするのが、やや残念か。2015/01/28
井上岳一
0
資本主義の起源と差別の起源が中世にあったとする論考を集めたもの。寄せ集めなので繰り返しも多いが、刺激的だった。「公」の概念を捉え直すために、この人の論考をきちんと読み直そうと思った。2013/08/24




