内容説明
中国はなぜ権威主義体制なのか?この先、どこへ行くつもりか?国内の言論抑圧、南・東シナ海への海洋進出、香港市民やウィグル・チベット民族弾圧。中国では、なぜ「民主主義の芽」が育たないのか。統治のヒエラルキーを支える儒教思想、独特の国家観を生む天下論。中国政治の思想と行動を、その伝統思考を掘り下げて明かす渾身の力作。
目次
序章 強大化する中国への五つの問い
第1章 民主と統治
第2章 政治文化から考える中国の権威主義
第3章 「国家」「民族」と「秩序」の見方
第4章 中体西用論とイニシアティビズム
第5章 国家戦略としての中国モデルの模索
第6章 伝統思想から見た中国の外交観
第7章 新たな「影響圏」建設の試み
終章 秩序と民主主義―専制主義の超克に向けて
著者等紹介
天児慧[アマコサトシ]
早稲田大学名誉教授。1947年生まれ。早稲田大学卒業、一橋大学大学院博士課程修了。社会学博士。外務省専門調査員として北京日本大使館勤務、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授等を歴任。専門は、中国政治、東アジア国際関係論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スプリント
11
タイトルが秀逸。 中国はロジックで欧米は思考。 その相違がどのような未来へ導くのだろうか。2024/02/20
Yuki2018
6
中国は米中が世界をリードするG2の国際秩序構想を隠していないが、では中国による秩序とはどんなものか。欧米の「国家間バランスオブパワー」に対し、中国は「天下」の概念=中国皇帝を頂点とした国境が不明確な概念を持つ。また被統治者は慈しみの対象だが参政権はない、庶民も被害を最小化するため政治に消極的な態度が伝統となったため、文革のような大失政によっても中共の統治は揺るがなかった。「中国の特色ある」思想で西側に対抗したいようだが、結局は一党独裁でありチェックが働かない。少なくとも私はこのような統治は御免被りたい。2022/06/05
お抹茶
3
西洋の民主主義とは異なる「中国型民主」の中身とそれを支える思想的根本を論じる。歴史的に,治者が主体者で,受動的存在である被治者=民が行為者であるという認識は持たれていない。中国の政治文化は本質的に権威主義で,他国に対する態度にもよく表れている。中国を長年研究してきた著者だけあって,時事問題をふまえつつ表面的な理解にとどまらない奥深い思考を広げている。あとがきに「この歳になってつくづくと思うのだが、気力はあるのだが体力と知力の衰えは否めない」と書いてあって,ちょっとしんみりした。2023/02/22
Tatsuhiko
1
現代の「中国のロジック」を儒教や九品中正といった歴史に求め、それを「欧米思考」と比較するというスケールの大きい本。ともすれば居酒屋談義にもなりそうなものだが、一生を中国研究に捧げてきた著者が語ればこそ「結局、中国人の発想の特徴として、パワー信仰が強く、ヒエラルキーをベースに人間関係を形成するのだと考えるようになった」(p.111)といった率直な見解にも説得力が生まれるのだと思う。2022/09/30