内容説明
過ぎ去った平成の記憶を掘り起こし時代精神の深層にせまる「落下するヒポカンパス」、敬服する知識人の死を悼む「黒猫」など二七〇首を収録。現代歌人集会賞を受賞した前歌集『Bootleg』に続く、過去と同時代に鋭く対峙した第二歌集。
目次
1(あじさい園;無について ほか)
2(地下鉄のスー;バッド・ランド ほか)
3(落下するヒポカンパス 平成じぶん歌;海蛇 ほか)
4(黒猫;夏草 ほか)
感想・レビュー
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qoop
3
一首の中で意外な展開を感じることは少ないが、逆に平叙ゆえにしっくりと馴染む/染み込む感覚を覚える。過剰な自意識を削いだ結果か、初めから自然に顕れたものか。散文的と呼ぶと褒め言葉にはならないのかも知れないが… /カステラは乾きやすくて本題に辿りつかない感触がある/絶妙な日陰にうまく収まってかに道楽のかにを見上げる/Wikipedia なのにいろいろすごすぎて樹木希林のページを読みふける/この店のパンが好きだな虹の色よりもたくさん種類があって/明治には戻れないのにみずがめに猫を突き落としたのは誰だ2021/06/09