目次
つじうら
水文学
越えるときの火
連絡船は十時
砂斬り
金吾中納言
ミネルヴァ
水煙草森
デパートと廃船
赤丸
リッツカールトン
Re:連絡船は十時
眼と目と芽と獏
虹蔵不見
ユダのための福音書
Save? Continue?
冷たい高原
至空港
暖かさと恐ろしさについて
この林を抜けると花の名を一つ覚えている
清澄白河
いつか坂の多い街で暮らしましょう
著者等紹介
千種創一[チグサソウイチ]
1988年名古屋生。2005年頃、作歌開始。2009年、三井修の授業「短歌創作論」の受講生らと「外大短歌会」創立。2010年、短歌同人誌「dagger」参加。2011年、韻文と散文の同人誌「ami.me」創刊に参加。2013年、短歌同人誌「中東短歌」創刊。同年、連作「keep right」で塔新人賞。2014年、評論同人誌「ネヲ」参加。2015年、連作「ザ・ナイト・ビフォア」で歌壇賞次席。同年『砂丘律』上梓。2016年、日本歌人クラブ新人賞、日本一行詩大賞新人賞。中東在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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livre_film2020
36
全部に共感したわけではないし、理解できたわけでもない。でも、この人が詠む歌を好きだと思う。この人の視点で切り取られる世界の在り様が胸を打つのだろうか。「絶縁体という単語の、存在の、絶対的なさみしさをおもう」「あなたから借りた詩集のここからは付箋の色が変わる 秋かも」「生きているあなたの息が見えるなら真冬も悪くはないので歩く」「筆を折った人たちだけでベランダの季節外れの花火がしたい」「そしてその夜のことを記すため誰かがまた筆を執るといい」「千夜も一夜も越えていくから、砂漠から獏を曵き連れあなたの川へ」2024/03/02
さとみん
11
タイトルと装丁に惹かれて手に取った本。気軽な調子で始まった歌集は、読み進めるにつれて温度を失っていく。決定的な何かがあるわけではないが、「あなた」と呼びかける相手との距離。日常が色を失いモノクロになっていくような感覚、それでも最後まで重さはなく軽やかだ。もっとも後書きと重版記念冊子を読んだがために、後付けで印象が変わった可能性があることは否めない。タイトルの由来であろう「千夜も一夜も~」が素敵。2022/01/07
寿児郎
10
『砂丘律』と比べ、少し理解できる歌が増えたかなと思ったが、読み終えてからもう一度パラパラ見てみたらやはり難解だった。痛々しいほどに瑞々しい感性を持った人の、苦しみの経験から湧き出る言葉たちというものに、まだぼくはチューニングを合わせられていないのだろう。『砂丘律』とともに、いつかまた再読する日が来ることを願って。2024/02/18
qoop
9
異郷での日々を詠った作品が強く印象に残ったが、本書はより抽象度が増している様子。あふれる情感を短歌のロジックのうちに納めようと苦闘したかのような作品が多いと感じたが、どうなのだろう。それと、装丁の素晴らしさは特筆したい。/鳥がたまに花を食べるじゃないですか、あれ、めちゃうらやましいなと思う/これ走馬灯に出るよとはしゃぎつつ花ふる三条大橋わたる/絶縁体という単語の、存在の、絶対的なさみしさおもう/永久に会話体に追いつけないけれど口語は神々の亀/きのことは柔らかい釘、森にいる誰かを森に留めておくための2020/07/22
🈳
7
歌が湿ってる しとしと 静かな湖、波紋 「ねむの花すべてを落とす村雨のそのたび僕を思い出してね」いつだって思っていてほしいのにわたしだけ忘れたいのはずるかな 樫の木が揺れる日はすぐに思い出してね、わたしを 「人生が何度あっても間違えてあなたに出会う土手や港で」「雨に目を細めるあなたがいたこともかなしい誤読でしかないのか」あなたとの出会いを、存在を誤ちとしてしまう自己認識が悲しい どれだけの痛みが他人との関係を間違ったものと認識させるのかわからないけど2022/01/05