内容説明
断念や諦めの末に人は祈るのだろうか。一首にすると祈りは姿を顕すのだろうか。自身の、息子の、そして一人ひとりのはかない願いを大口は、丹念に掬いとって表現していく。言葉がどんどん無化されていく時代にあって、信念に裏打ちされた「ことば」だけがつよく響く。
目次
ながさきの
照葉
温泉と河童
ジョウビタキ
三月十一日
互選
モノクロの神
鳥の至福
草の実
信綱と鰐
好奇心
ランタン
明るき声で
ザベリオ
辺野古崎
団栗
家康の首
ハイヒール
立ち上がる
声
侘助
何を恐れて
空色の花
Roxana
デコ
夕焼けを見たか
VOID
誰のことばの
201号法廷
ビールの人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
3
さまざまなテーマが詠まれ読後にとても豊穣な気持ちになれる素敵な歌集。時代の変わり目にこの歌集に出会えて本当に良かった。繰り返し読み返したいし大口玲子さんの他の歌集も読み返したい。未読の歌集も読みたくなる。2019/08/28
yumicomachi
3
2019年5月刊行の第六歌集。タイトル「ザベリオ」はXavierのイタリア語読みからきた表記で、フランシスコ・ザビエルのこと。震災後仙台から宮崎に移住したカトリック信者である著者の、地上での善を希求する祈りと実践、そして息子との関わりが多く詠まれている。〈祈りとは遠く憧るることにして消しゆく われを言葉をきみを〉〈かたつむりつの出すまでを子と待てるこの世の時間長くはかなし〉〈「シン・ゴジラ」観て帰りたる夫と子の震災の記憶に雪が降る〉〈われはまだ地の世にあれば苦しみて斯くも地の世の善にこだわる〉2019/07/17
仁藤
1
(「分身の術は十歳過ぎてから」もつともなり佐助先生の言) 82点2023/09/17
瀬希瑞 世季子
0
菜の花の黄は水面にあふれつつ死につつ蝶を集めてゐたり2022/03/16