目次
羽ペン
毛糸の手袋
帰る日
遠出がしたい
綿虫
幽霊坂
かたばみの花
梅の実柿の花
丸いあたま
バターのお話〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
332
河野裕子の第13歌集。2005年~2008年の歌を収める。この時期は河野にとっては実にたいへんな時でもあった。母親の末期の看護をしつつ、自身も癌が再発していたのである。タイトルの「母系」は、そんな母親から自分、そして娘に受け継がれているミトコンドリアを確認することで自身の生の証ともしたのだろう。篇中には、そうした母を歌ったもの、癌と共にある自身を歌ったもの、そして次に託する娘を歌ったものが散見される。そこには、河野の庶幾した「確かなもの」が歌として定位されているように思うのである。2022/06/25
新地学@児童書病発動中
94
河野裕子が天性の歌人であることが改めて実感できる歌集。家事、家族のこと、ペットのこと、季節の移り変わりなど、生きて感じることが歌になる。尽きることのない泉のように歌が溢れだす感じ。この歌集の山場は癌で死にゆく自分の母を見つめて、歌にしたもの。読者の心を激しく揺さぶる力を持っている。その中の一つをご紹介。「君江さんわたしはあなたであるからこの世に残るよあなたを消さぬよう」。自らの癌の再発が分かって不安におののきながら、母に向かってこんな風に言い切る心の強靱さに脱帽。2014/06/24
双海(ふたみ)
12
数年ぶりに河野さんの歌集をきちんと読みたいと思って。母の死、そして自らの病を見つめた第十三歌集。ここにはひとつだけ挙げておく。いいなと思う歌がたくさん。「遺すのは子らと歌のみ蜩のこゑひとすぢに夕日に鳴けり」2023/06/18
メルセ・ひすい
5
14 ★5 清冽とは♡彼女の為の言葉☆今朝、母が亡くなった。昨夜、家族そろって見舞ったが、母にはもう目を開ける力が無かった。耳元で、お母さん、みんなが来ましたよとささやくと、ゆっくりと口をあけ、「ありがとう」と言おうとしていることが口の形で分かった。卵巣と脾臓の癌、加えて大腿部骨折という苦痛のなかで、七ヶ月よく耐えて生きてくれた。生涯にただの一度もわたしを叱ったことが無い母だった。どんな事を言ってもスポンジのように吸い取って、何も言わずに聞いてくれ、一緒に居ても気疲れすることのない人だった。(^0^)2011/01/19
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