感想・レビュー
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アナクマ
28
木炭作りの取材記だが、作者は炭窯で働くひとりの美しい娘に視点を据え、微妙に怪しい目線で描写。捕まえた河鹿蛙を小川に放し、彼女が聴くだろうかと考えたり。別れの挨拶ができなかったと悔やんだり。◉黄色いふわふわの玉(の苺)が美味いとか、蛇結茨の花を手に取ろうとしたら棘がメチャクチャ痛かったとか、木酢が震えるほど酸っぱいとか。具体的で面白いし、動植物の固有名詞もふんだんに使われて豊か。◉しかしこうして「近代」によって農山村が「発見」されていったのだろうかね。今と同じかも。1906年。千葉の鴨川市清澄が舞台。2019/03/30