内容説明
大正十三年、四歳で十七代目中村勘三郎に入門以来、中村屋三代に仕える女形。九十三歳の歌舞伎役者。昭和の名優から現在の俳優、劇作家たちとの逸話やこぼれ話、戦前戦中戦後の舞台、海外公演、十八代目勘三郎との別れ―。「小山三さんへ三十三の質問」つき。
目次
小山三思い出写真館
長いわよ、話はいっぱいあるんだから
四歳の歌舞伎役者
浅草の落第生
ごまかしの天才
半ぺん一枚のおつかい
東宝劇団の日々
林長二郎、現る
道頓堀芝居
即時帰郷。〔ほか〕
著者等紹介
中村小山三[ナカムラコサンザ]
屋号、中村屋。紋、角切銀杏。本名、福井貞雄。舞踊名、猿若勘司朗。大正9年8月20日、東京鳥越生まれ。四歳で三代目中村米吉(当時。後の十七代目中村勘三郎)に入門し、15年10月本郷座『忠臣講釈』の重太郎の一子で中村小米を名乗り初舞台。十七代目勘三郎が四代目もしほを襲名した昭和4年に中村蝶吉に改名。23年6月東京劇場『御存俎板長兵衛』の娘役で中村しほみと改め、名題昇進。34年4月歌舞伎座、十八代目勘三郎が五代目中村勘九郎として初舞台を踏んだ『昔噺桃太郎』のお雉で二代目中村小山三を襲名。中村屋三代に仕える女形(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
犬養三千代
8
中村屋の重鎮だった小山三さんの語りおろし。17代勘三郎の最初のお弟子さん。門閥の「ガラスの天井」に苦しみながら自分のポジションを脇役として精進し「後見」黒子で賞を取る。もうこんな人はでないだろうな。記憶が素晴らしい。17代目の若かりし頃のエピソードは面白くて知らないことばかりだった。DVD引っ張りだして見よう。 門閥の壁に幾多の才能が消えてしまう。もったいないとも思う。18代目の死は辛い玉三郎さんと坂田藤十郎さんの優しさは小山三さんは身に沁みたのだろうな。2019/09/22
OKKO (o▽n)v 終活中
4
図書館 ◆4月に小山三さんが亡くなっていたのを知らず、慌てて図書館のサイトを見たら、数人が予約を入れていた。歌舞伎など一度も生で見たことのない私だが、小山三さんのような人生があそこにはたくさんたくさん詰まっていることを知った ◆人生を渡っていくのには、迷いより信念のほうがやっぱり大事なんだろう2015/05/07
絶間之助
4
面白い本ですね。まず、小山三さんの役者人生が面白い。特に、十七代目勘三郎との関係、その下で作り上げた脇役の数々。さらに、小山三さんの話を通して、戦前戦後の日本の歌舞伎、広く演劇がどう変わって行ったのかが分かります。実際の第一線の人ですから、舞台の裏話から、役者の個性、その時の演目の面白さまで、とても楽しい話が満載。こういう話の記録を残すことは貴重です。ああ、面白かった!2014/03/23
rinrinkimkim
3
つい先日橋を渡り、逝ってしまいました。本書の最後は歌舞伎座杮落とし公演を語っています。ナオちゃんのこと心残りかしら?いえいえ十分に介錯しましたよ。先生が呼んでますんでごめんください。という声が聞こえてきそうです。先生以外にも大成駒や神谷町、紀尾井町がみんなして待ってることでしょう。芸歴90年。もうこの語りは聞かれない・・・合掌2015/04/12
石橋
3
こういう脇役の芸談は貴重。もっと他の人の言葉も残しておくべき。 TVでみる小山三さんのイメージどおりの語り。大抵「昔はちがった」って台詞は、若い者からすると鼻につくことが多いけど、小山三さんの言葉は、そんないやみもなくすんなり入ってくる。スポットライトを浴びる主人公にはなれないけれど、舞台を完成させる大事な「ピース」を担っているという自負が感じられた。もうすぐ「お雉」の役も来るよ、お元気で。2014/01/20