内容説明
華やかな舞台の裏側で見せる、名優たちの芸への畏れ、厳しさ。時にのぞかせるその素顔。同時代に生き、歌舞伎の制作の現場で著者が肌で感じた二十三人の「芸と人」。
目次
一代の名女方 六代目中村歌右衛門
寡黙な英雄役者 初代松本白鸚
博覧強記の怪優 八代目坂東三津五郎
爽やかな江戸前の人 十四代目守田勘弥
荒事役者ここにあり 二代目尾上松緑
上方役者の愛嬌と洒脱 二代目中村鴈治郎
天性の歌舞伎役者 十七代目中村勘三郎
入神の舞台―菅原と忠臣蔵 十三代目片岡仁左衛門
明るく気品ある近代の女方 七代目尾上梅幸
奇も衒いもない人柄のよさ 十七代目市村羽左衛門〔ほか〕
著者等紹介
織田紘二[オリタコウジ]
1945年、北海道生まれ。67年3月國學院大學日本文学科卒業。同年4月国立劇場(現独立行政法人日本芸術文化振興会)芸能部に勤務。以後43年間、歌舞伎、新派をはじめ、文楽、舞踊、邦楽、民俗芸能、琉球芸能などあらゆる伝統芸能の制作、脚本、補綴、演出に携わる。国立劇場芸能部長、理事を経て、現在、日本芸術文化振興会顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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筋書屋虫六
1
ミスター国立劇場(?)こと織田先生の名優録。戦後歌舞伎の王道が歌舞伎座を中心に熟成された一方で、復活狂言や若手育成公演、国立歌舞伎俳優研修所の運営…と国立劇場が果たしてきた役割は相当大きい。謙遜した文体に、そーか織田先生って公務員だったのだな…と改めて認識しつつ、そういう立場から一癖も二癖もある役者たち相手に(時に罵倒されながら)歌舞伎文化の伝承と発展を下支えした人生だったのだと、感心しました。毒はないけどそれぞれの俳優の心に残るエピソード満載。辰之助の「織ちゃん、友達だよな」はやっぱり心痛、泣けます。2011/12/17
みつひめ
1
「演劇界」連載の単行本化。連載時にもだいたいは読んだのだが、辰之助さんの最後のところは、やっぱり涙だ…。国立劇場創立からの20年間ぐらいは、いろいろと面白そうな試みがたくさんあったんだなぁ。最近はなんかイマイチだよなぁ。小劇場歌舞伎とか、復活してくれたらいいのに。ま、大人の事情があるのもわかるけど…。2011/09/04
shellgai
1
「演劇界」に掲載された連載をまとめた本。これまで他の本で紹介されたエピソードだけじゃなく、著者自身が経験したことがたくさん語られているのが面白い。辰之助との「織ちゃん、友達だよな」というエピソードには泣いた。2011/05/15
まやま
0
図書館の特設展示で手に取る。余計なものを削ぎ落としたような表現で、歌舞伎界への基礎知識が無いと、ちょっと難しいかな。自分の前に借りられた形跡が無い本で、勿体無い感。2014/01/05
Hatsumi Sakoda
0
初代辰之助、九代目宗十郎、三代目延若…今、いたらどれだけ歌舞伎が厚みを増しただろうに。演じるという芸術はその場限りのものだけに、消えてしまうことが多いのが残念。2013/09/29