出版社内容情報
レーモン・クノー『文体練習』を手がけた名翻訳者/フランス文学者による、奇想の小説集。
パンデミック後の世界を描く傑作短篇から近未来ディストピア・フィクションまで、驚異とユーモアに満ち満ちた全16篇。
診察から帰ってきた鈴麗の声は弾んでいた。
「ミミタケなんだって。すごく珍しい、って感心してた」
「何、それ?」
「あのね、耳がキノコになるらしいよ。最初のあれ、真菌性のハナタケだったんだって。気がつかなくて申し訳なかったって頭を?いてたけど、それが耳に来てしまったんだって。それでね、ハナタケがミミタケになったら、もう間に合わないんだって」
「何が?」
「だからさあ、ミミタケになったときは、もう脳の中に菌糸が入り込んでるの。だから治らないんだよ」(「KINOCCO-19」より)
内容説明
レーモン・クノー『文体練習』を手がけた名翻訳者/フランス文学者による、奇想の小説集。パンデミック後の世界を描く傑作短篇から近未来ディストピア・フィクションまで、驚異とユーモアに満ち満ちた全16篇。
著者等紹介
朝比奈弘治[アサヒナコウジ]
1951年生まれ。翻訳家・フランス文学研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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三月うさぎ(兄)
1
キノコを食べ、蕎麦殻の枕で悪夢を見て、屋根裏を這い、蟹を食い、無限に碁を打ち、雨を見続け、虫を詰め、本を整理し、顕微鏡を売り続け、ひきつったさみしい笑いを浮かべながら静かに終わり続けるヒトという種族を、やさしいようなあきらめたようなあざわらうような筆致で描いた傑作集。『間男』と『丘の上の桐子』は、オールタイムベストクラスでした。乱歩と筒井康隆とバーセルミとコルタサルと谷崎とバラードが合作したと思えば間違いないです。…あれ、フランス作家がいない…。2023/11/12
よだみな
0
あれも好き、これも好きと数え上げたら全部の短編になってしまうような傑作短編集。『虎の目』『三途の湯』『流されて』『山荘日記』読み心地は吉田健一のようにふわふわとしてて、でも筒井康隆や谷崎潤一郎や、そうな方の倉田タカシやコルタサルやら。とにかく次回作もたのしみにお待ちしております。2024/02/15
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