出版社内容情報
“忘れられた”世界的作家の珠玉文学選
張赫宙は、かつては、魯迅と相並ぶ、アジアを代表する作家と称された。しかし、植民地期朝鮮の作家として日本語で活躍したため、張の文学は戦後社会に帰属先を失い、長い間、漂流してきた。現在、多文化、多言語における「近代」の急速な見直しが進められるなか、「世界文学」としてその作品は再び注目されはじめている。本書は、代表作「仁王洞時代」をはじめ、文学的な価値が高いものを中心に珠玉の短編を編む。
本書の特徴
1:張赫宙の主要作や代表作のうち、前著の『張赫宙日本語作品選』(勉誠出版)に漏れ、戦後において再刊・再録されることがなかった作品を取り上げ、張赫宙文学をより幅広く紹介することを意図した。
2:商業的目的や政治的意図からの選別ではなく、文学的に完成度の高い作品を取り上げ、全体が俯瞰できるように意図した。
3:張赫宙文学には植民地期の実態や実生活を知る資料的な性質の作品が多い。この点も編集の上で考慮した。
4:本書で紹介する作品は1934年から1941年の夏に至るまでのものである。張赫宙が朝鮮大邱で旺盛な作家活動をし、日本に移住して懊悩し、太平洋戦争の渦に巻き込まれる直前までの作品である。
内容説明
張赫宙は、かつては、魯迅と相並ぶ、アジアを代表する作家と称された。しかし、植民地期朝鮮の作家として日本語で活躍したため、張の文学は戦後社会に帰属先を失い、長い間、漂流してきた。現在、多文化、多言語における「近代」の急速な見直しが進められるなか、「世界文学」としてその作品は再び注目されはじめている。本書は、代表作「仁王洞時代」をはじめ、文学的な価値が高いものを中心に珠玉の短編を編む。
目次
小説(仁王洞時代;十六夜に;一日;墓参に行く男;山男 ほか)
エッセイ(特殊の立場;私小説私見;理論の貧困;「春香傳」について;私の小説勉強 ほか)
著者等紹介
張赫宙[チャンヒョクチュ]
1905年‐1997年。日本植民地期に活躍した代表的な朝鮮人日本語作家である。在日朝鮮人文学の嚆矢ともされる。植民地統治下における朝鮮農民の貧困と惨状を告発する作品や植民地期を生きる多様な人間群像を自然主義リアリズムの文体で巧みに描いている
南富鎭[ナンブジン]
1961年、韓国醴泉生まれ。慶北大学校国語国文学科卒業。国語教諭を経て1990年に日本文部省国費留学生として来日。筑波大学文芸言語研究科博士課程修了。博士(学術)。現在は静岡大学人文社会科学部教授
白川豊[シラカワユタカ]
1950年、香川県生まれ。東京大学文学部第一類(文化学)卒業。1979年に韓国留学。1985年、東国大学校大学院国語国文学科博士課程修了。1990年、文学博士。九州産業大学国際文化学部教授などを経て、同大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。