うつせみ

鈴木 創士【著】

作品社（2020/11発売）

• サイズ 46判／ページ数 252p／高さ 20cm
• 商品コード 9784861828331
• NDC分類 913.6
• Cコード C0093

出版社内容情報

洒脱にして剣呑、静謐にして囂囂たる、“僕”と“おじさん”と“おじいさん”の夢幻の如き日々は、どこに辿り着くのか。
ランボー、アルトー、ジュネ、ヴィアンの翻訳者が満を持して放つ、破格の書き下ろし長編小説！


　僕の家にはおじいさんとおじさんがいて、僕がお世話になっているところや知り合いのお店なんかにとつぜん出没しては、わざと迷惑をかけたりして僕に恥をかかせるのだが、どこかに忠実な間諜がいて、そいつが連絡でもしているみたいに絶妙のタイミングで現れるので、よけいに腹が立って仕方がない。あっちは二人だから、いつもこちらは多勢に無勢みたいな気がするし、彼らはむやみに嵩高いのだ。いつか手押しリヤカーに二人を乗せて夜のメリケン波止場から暗い海に突き落としてやろうと思っている。（…）確かなことは、僕がいつまでたっても三人のなかで一番年下だということだし、何を隠そう、この劣等感をぬぐうことができず、自分でも情けなくなることがある。子供の頃から、僕はできるだけ早く歳をとりたかった。さすがにいきなり皺だらけのじじいになるのは嫌だったけれど、いつまでたっても子供モドキでいることに耐えられなかった。（本書より）

内容説明

洒脱にして剣呑、静謐にして囂囂たる、“僕”と“おじさん”と“おじいさん”の夢幻の如き日々は、どこに辿り着くのか。ランボー、アルトー、ジュネ、ヴィアンの翻訳者が満を持して放つ、破格の書き下ろし長篇小説！

著者等紹介

鈴木創士［スズキソウシ］
１９５４年生まれ。フランス文学者、作家、ミュージシャン（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

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[ラスカル]

おじいさんとおじさんと住んでいる僕の手記。3人で住んでいるけど3人が揃うことはないし、家庭的なものは感じられずそれぞれバラバラに生活している。広島で被曝したおじいさん、学生運動をしていたおじさん、それぞれの手記や小説を読む僕。そして僕も行方がわからなくなる。僕の従兄弟が廃屋からこの手記を見つけて終わる。 タイトルとランボー、アルトー、ボリス・ヴィアンの翻訳者ということで手に取ったけど…。蕉門の路通を知れたことぐらいが収穫だった。

2021/04/25

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おじいさんの日記、おじさんの手記を盗み見て書き写す僕の日誌、それを読んで記憶を辿る従兄。虚実の境界が溶けかつ完全に消えはしないギリギリのラインで言表を堆積させるベケット的前衛小説。最近作品集が出版された活弁士、詩人の詩村映ニへのオマージュというかこれがインスピレーションの源泉のひとつのようで気になる。

2021/05/30