出版社内容情報
因果の海に運命は反復し、悲しみは回帰する。
時は過ぎ去る。この至高の瞬間もほどなく過ぎ去ってゆく。至上の時は、それを二度と取りもどすことがかなわないことで、かえって記憶のなかで繰りかえし反復され、それじたい回帰し、時間の流れそのものをやがて支配することになる。過ぎ去った一点に凍りついた思いが、時間を逆流させ、時を歪めて、ひとのいとなみを撓め、悲劇を手ぐりよせるしだいとなるだろう。――本文より
目次
反復と模倣―源氏物語・回帰する時間の悲劇によせて(導入―初雪の憂愁;発端―桐壺と藤壺;原型―藤壺と紫上;反復―夕霧と柏木;模倣―大君と浮舟;後史―狭衣その他)
源氏物語・小考―和辻、小林、宣長
著者等紹介
熊野純彦[クマノスミヒコ]
1958年、神奈川県生まれ。1981年、東京大学文学部卒業。現在、東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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