戦下の淡き光

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  • サイズ 46判/ページ数 294p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784861827709
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

出版社内容情報

1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した――
母の秘密を追い、政府機関の任務に就くナサニエル。母たちはどこで何をしていたのか。周囲を取り巻く謎の人物と不穏な空気の陰に何があったのか。人生を賭して、彼は探る。あまりにもスリリングであまりにも美しい長編小説。


 ときおり、テムズ川の北の掘割や運河で過ごしたときのことを、ほかの人に委ねてみたい気持ちになる。自分たちに何が起こっていたかを理解するために。それまで僕はずっと匿われるように暮らしていた。だが、今では両親から切り離されて、まわりの何もかもを貪るようになった。母がどこで何をしていようと、不思議に充足した気持ちだった。たとえ真相が僕たちには隠されていたとしても。
 ブロムリーのジャズクラブでアグネスと踊った晩のことを思い出す。〈ホワイト・ハート〉という店だった。混んだダンスフロアにいると、隅のほうにちらっと母が見えた気がした。振り返ったが、もう消えていた。その瞬間に僕がつかんだのは、興味をあらわにした顔がこちらを見ている、ぼんやりした映像だけだった。(本書より)


【著者・訳者略歴】 マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje) 1943年、スリランカ(当時セイロン)のコロンボ生まれ。オランダ人、タミル人、シンハラ人の血を引く。54年に船でイギリスに渡り、62年にはカナダに移住。トロント大学、クイーンズ大学で学んだのち、ヨーク大学などで文学を教える。詩人として出発し、71年にカナダ総督文学賞を受賞した。『ビリー・ザ・キッド全仕事』ほか十数冊の詩集がある。76年に『バディ・ボールデンを覚えているか』で小説家デビュー。92年の『イギリス人の患者』は英国ブッカー賞を受賞(アカデミー賞9部門に輝いて話題を呼んだ映画『イングリッシュ・ペイシェント』の原作。2018年にブッカー賞の創立50周年を記念して行なわれた投票では、「ゴールデン・ブッカー賞」を受賞)。また『アニルの亡霊』はギラー賞、メディシス賞などを受賞。小説はほかに『ディビザデロ通り』、『家族を駆け抜けて』、『ライオンの皮をまとって』、『名もなき人たちのテーブル』がある。現在はトロント在住で、妻で作家のリンダ・スポルディングとともに文芸誌「Brick」を刊行。カナダでもっとも重要な現代作家のひとりである。

田栗美奈子(たぐり・みなこ)
翻訳家。訳書に、コリン・バレット『ヤングスキンズ』(共訳)、クリスティナ・ベイカー・クライン『孤児列車』、マイケル・オンダーチェ『名もなき人たちのテーブル』、ラナ・シトロン『ハニー・トラップ探偵社』、リチャード・フライシャー『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』、ジョン・バクスター『ウディ・アレン バイオグラフィー』(以上作品社)他多数。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

123
フランス人はイギリス人は感情をきちんと表現しないという。悲しみが強すぎると言葉にできない。そう語っている主人公がアイロンをかける行動は、哀しみと愛の深さを慎ましやかに放射する。憎しみはどこに置いてきたのか。その人の知らないことを知ろうとすることは、弔いであり、送りであるのかもしれない。彼らがあまりに控えめだったので、強く表現されなかった心の動きを、何度も読んで確認したいと思う。2020/02/10

やいっち

101
本書は、「一九四五年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手にゆだねて姿を消した。」から始まる。著者は本書の執筆を始めたときは、この一行しか頭になかったとか。あとは書きながら考える。読者どころか書き手自身をも翻弄するかのように。作家たるものの至福でなくて何だろう。だからといって作家の気紛れに終始するはずがない。徹底的に調査、執筆に三~四年、編集に二年。2020/03/08

(C17H26O4)

90
突然姿を消した両親。母親の秘密は何なのか。残された姉弟の周囲に次々に現れる大人たちは何者なのか。信頼できるのかできないのか。『名もなきものたちのテーブル』を読んだときも思ったが、物語全体に紗がかかっていてその向こう側の出来事を見ているようだった。手掛かりを求め続ける弟ナサニエルの母親への愛情、姉の母親への憎しみ、母親の子供たちへの愛。激しい感情も戦下で起きた出来事も、静謐な文章の中に隠されたまま、全容が明らかになるわけではない。が、断片を繋ぎ合わせるようにして見えてくる真実に、溜息のような長い余韻が残る。2020/11/08

南雲吾朗

71
とにかく、めちゃくちゃ面白い。第1部は成長記。第2部はスパイ小説。第1部で謎が多かった主人公の母親の過去や少年時代に世話になった人々の真実が第2部で徐々に明らかになっていく。哀愁に満ちた締め括り方がとにかく素晴らしい。オンダーチェの作品は一つの事柄を多方面から色々な時間軸で描写しており、読み進むにつれてその事柄への理解が深まっていく感じが好きである。読んで凄く良かったと思わせる作品である。オンダーチェは凄い!2020/04/11

キムチ

63
灯火作品のコレクションを列挙する企画があればオンダーチェのそれはすべてランクインするはず。もの悲しさの中に事実を悄然と受け止めざるを得なかった主人公ナサニエルの姿が屹立して見えた傑作だった。オンダーチェ独特のダブルナレーション、地図、行きつ戻りつする時間・・全てが靄の中にあるような情景として展開される。20c半ばから舞台は始まりミステリーとは言えぬまでも手にするものが脆いリアル感・・漠とした中を「僕」とともに読み手も進んでいく。子捨てとしか思えぬ母(父も)~『蛾』、『ダーダー』は姉弟をいいように?扱う。2019/11/05

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