内容説明
父親の隠された真の姿と第二次大戦下の歴史の闇。
著者等紹介
バスケス,フアン・ガブリエル[バスケス,フアンガブリエル] [V´asquez,Juan Gabriel]
1973年、コロンビアの首都ボゴタに生まれる。ロサリオ大学で法学を学び、その後フランスに留学、ソルボンヌ大学でラテンアメリカ文学の博士課程に進む。23歳のときに最初の小説『人』を刊行。他の小説作品に、『物が落ちる音』(2011年、アルファグアラ賞受賞、邦訳・柳原孝敦訳、松籟社)がある。ノンフィクション『歪曲の芸術』(2009年)でシモン・ボリーバル・ジャーナリズム賞を受賞している
服部綾乃[ハットリアヤノ]
翻訳家
石川隆介[イシカワリュウスケ]
1974年メキシコ生まれ。ラテンアメリカ文学博士(カリフォルニア大学バークレー校)。現在、カリフォルニア州立大学Fullerton校教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
133
中盤のアンヘリーナの告発とセルヒオの暴言はさらに練るべきと感じたが、読み通した読者に、この書の厚み全体で考えることを促す血の通った作品。語ることの無分別さ。語られない事への執着。若さの不寛容さ(父ガブリエルの動機はこれだと思う)。国と国との戦争において個人は裁くべきか。祖国を離れた者が祖国を憂う時にしてはならぬ事。告発されるべき者。告発はなされるべきか。故国を離れる家族の世代間の断絶。書いた時に作者は20代であったこと。内容より提示に感服。鴎外の『大塩平八郎』での問いと同じスピリットを最後に感じる。 2018/01/24
ヘラジカ
42
翻訳されることを知ったときから長らく楽しみにしていた本。厳めしい表紙と本自体の重厚感から大きな歴史の物語を想像していたが、その中で構築された個人の歴史を描いているため、身構えていた割には馴染みやすい作品だった。外国語文学ながらアメリカでベストセラーとなったのも納得な完成度。人間関係の普遍的なテーマが書かれている分、読み応えはあるものの素直かつスムーズに読むことができた。延期に延期を重ねられてかなり焦らされたけれど待った甲斐があった。(2017・66)2017/10/06
かもめ通信
22
ノンフィクション作家を語り手に作中作を織り込みながら展開する物語は、戦中戦後のコロンビアの黒歴史を告発する。具体的な日付が付され、所々に実在した人物に関する記述や、実際にあった出来事などが織り込まれているために、読者はこれが語り手の作家と彼と関わる人々をめぐるノンフィクションであるかのように感じながら物語を読み進めていくことになる。そしてまた常に語り手である作家が直面する周囲との軋轢や、書くことの苦労を前に、そうまでして作家はなぜ物語を創作するのかという、書くことの意味を考えさせられもした。2018/09/25
saeta
10
導入部はどうかなって印象だったが、第3章のザラの独白辺りからどんどん引き込まれ、一気に読み切れた中々の良作だと思う。あまり語るとネタバレになりそうなので黙っておきますが、色々伏線を張ったりしてサスペンス調の趣もあったが、父親の動機以外は回収したんではないかな。後日談もあれこれ想像出来そうな終わり方で、これで良かったと思う。翻訳で一つ気になったのが、主人公(息子)の「僕」と「俺」の使い分け。年長者との会話では僕、自称では俺。私がこういう使い分けをしないので、常に違和感を感じながら読んでました。2020/01/23
yuki
5
自国の歴史への真摯な姿勢が胸に迫りました。国の歴史をみつめることは痛みを伴うことなんだということに改めて思い知らされました。 2018/01/06