内容説明
さよなら、パリ。ほんとうに愛したただひとりの女…。2014年ノーベル文学賞に輝く“記憶の芸術家”パトリック・モディアノ、魂の叫び!ミステリ作家の「僕」が訪れた20年ぶりの故郷・パリに、封印された過去。息詰まる暑さの街に“亡霊たち”とのデッドヒートが今はじまる―。
著者等紹介
モディアノ,パトリック[モディアノ,パトリック] [Modiano,Patrick]
1968年、La place de l’´etoileでデビュー。1978年、ゴンクール賞(Rue des boutiques obscures)、1996年、フランス文学大賞(全作品)等々。2014年、ノーベル文学賞。1945年、オー‐ド‐セーヌ県、パリ西部に隣接するブローニュ‐ビヤンクール生まれ
平中悠一[ヒラナカユウイチ]
1984年、『She’s Rain』で第21回文藝賞を受賞、デビュー。1965年生まれ。パリ大学修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kthyk
16
書かれたのは1Q84年、村上春樹とは関わりはないが、「失われた時のカフェ」の20年も前の作品。現実の時間と空間を錯綜させるのがモディアノのスタイル、どちらの作品が後か先かは読んでいて全く気がつかなかった。モディアノは2014年にノーベル文学賞に輝く、その際、スェーデンのアカデミーからモディアノ作品は「記憶の芸術」と評された。なるほどとアカデミー評にも感心した。「迷子たちの街」がフランスで評判になったのは今から30年も前のことなのだ。ー>2020/12/09
きゅー
12
イギリスの探偵作家のアンブローズ・ギーズは、エージェントとの契約のためにパリを訪れる。実は彼の本名はジャン・デケールと言い、20歳までフランスで生活をしていた……。いつもながらのモディアノ節でブレがない。今回もミステリアスな主人公の自分探しの旅。さすがに毎回同じようなストーリーなので飽きがくるが、それでも時間が経つと彼の小説を手にとってしまうのはやはり独特の魅力があるからだろう。それにしても偶然20年前の知人に出会うという出来事が何回も繰り返されるとげんなりしてくる。パリってそんなに小さい町なのだろうか。2016/11/29
algon
11
猛暑のパリにイギリスのミステリ作家がやってきた。しかし彼は20年ぶりにパリに戻ったのだった。彼の回想は邂逅を生み20年前の周辺の人々が徐々に現れ出でてくる。男のタンタン、ヘイワード、女のジータ、彼らを触媒にして次々にカルメン周辺の過去が立ち現れてくる。しかしそれらの事々の核心の部分は分からない。霧と詩情に満ちたような文体で読み進めていくが作家が何故パリを離れたかはラストの部分でやっと明らかになる。本の全体イメージ保持は分かるがちょっと引っ張りすぎじゃ?という俗な感想は捨て去りがたい。他の作品に期待しよう。2022/07/31
しょう
6
読んでる最中、ワープしてるかの如く、物語が飛んでいくように思うのは気のせいだろうか。個人的にはモディアノの作品の中でも群を抜いて理解しにくい作品だ。読んで理解できる人がうらやましい。2020/02/29
qoop
4
過去と現在を往来して、現実味のないパリへと沈んでいく主人公。記憶の残響と現在の喧騒とが打ち消し合った末の静けさに身を浸し、時の分岐点を逆方向へと進んであり得なかった現在を垣間見る。リアルに背中を向けることでそこからの人生をフィクショナルに生き、リアルを見つめ直すことで一種のメタに辿り着く。メタ空間であるパリからリアルなパリへと足を下ろすとして、主人公はどの現在に着地するのか。2016/03/10
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- 和書
- おかねもちとくつやさん