内容説明
存在の意味を問い直し、固有の可能性としての死に先駆けることで、良心と歴史に添った本来的な生を提示する西欧哲学の金字塔。傾倒40年、熟成の訳業。附:用語・訳語解説、詳細事項索引。
目次
序論 存在の意味を問う問いの提示(存在の問いの必要性と構造と優位;存在の問いを練り上げる上での二重の課題、考察の方法と概略)
第1部 現存在を時間性へと解釈し、時間を、存在を問う問いの超越論的地平として解明する(現存在の準備的な基礎分析(現存在の準備的な分析の課題の提示;現存在の基本的な体制としての世界=内=存在の全般;世界の世界性;共同存在と自己存在としての世界=内=存在、「ひと」;内=存在そのもの;気遣いが現存在の存在である)
現存在と時間性(現存在が全体的であることの可能性と、死に臨んで在ること;本来的な在りうべき在り方を裏付ける現存在にふさわしい証と果断さ;現存在の本来約に全体として在りうべき在り方と気遣いの存在論的な意味としての時間性;時間性と日常性;時間性と歴史性))
著者等紹介
高田珠樹[タカダタマキ]
1954年、福井県生まれ。1976年、大阪外国語大学ドイツ語学科卒業、1981年、京都大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻単位取得退学。現在、大阪大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kentaro mori
3
⚫︎現存在とは、現存在自身が開示されていることである。⚫︎何が「過ぎ去って」しまったのか。ほかならぬ世界が過ぎ去ったのである。2024/12/18
かずりん
3
普段見慣れない難しい概念が出てきて難解そのものである。現存在の自分がいるからこそ、世界が存在する。存在には時間性があり、時間の流れの先にある「死」の先駆的了解をもって未来の可能性に向かって進むことができる。死を意識して覚悟を決めるべきだと云う。デカルトの「われ思う、ゆえにわれあり」や「武士道とは死ぬことと見つけたり」の「葉隠」の心にも通じる。自分なりの理解に引き寄せてみたが、後半の立場が逆転するように見える「転回」の部分が未完に終わっていることでより難解さが増している。再度じっくり読みたい書だ。2021/05/28
ソノダケン
3
大著である。もっと縮められなかったんだろうか? 第一次世界大戦の敗北をうけて、シュペングラー『西洋の没落』などドイツ語の大冊が量産された。危機の時代を埋めあわせる様に。なかでも『存在と時間』は突出した作品であり、刊行時ハイデガーが30代だった事実は、後世の書き手を絶望させる。若僧のくせに「死に臨んで在ること」とかしゃらくさい。そして妬ましい。「形式主義と直観主義」の数学基礎論や相対性理論など、ドイツおよび世界の学問へ睨みをきかせてもいる。それでもなお未完の著作であることが、なにより恐ろしい。2014/12/08
ULTRA LUCKY SEVEN
2
今までで一番わかり易い日本語訳!!岩波とこれの二冊で読めます!!感謝!2014/04/20
Ryoma Okamura
0
不安は根源的に在来性に基づいており、また将来と現在とは在来性の中から初めて時熟する。不安に特有の時間性からは、不安という気分の際立った特性である威力の可能性のほどが確認される不安の中で、現存在は、自分の剝き出しの不気味さというところへすっかり引き戻され、またこの不気味さに気おされている。もっとも気おされることで、現存在はさまざまの「世間的」な可能性から引き戻されるだけでなく、同時にまた、本来的なひとつの在りうべき在り方の可能性を与えられもする(pp.513-514)。2021/09/21