内容説明
青年期から晩年まで、不断に探究されたベートーヴェン論の全貌。細部は全体のためにあり、全体は真理であるとする両者との対決の中に、概念として語りえぬ音楽を哲学として表現する畢生のライフワーク。
目次
序曲
音楽と概念
社会
調性
形式と形式の再構築
批評
初期の局面と「古典主義的」局面
交響曲分析ノ周辺
晩年の様式
晩年の様式を欠く晩年の作品
晩年の様式(2)
人間性と非神話化
著者等紹介
大久保健治[オオクボケンジ]
1934年、東京生まれ。東京大学文学部独文科卒業。現在、首都大学東京名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
8
断片的に書き残した未完のメモを寄せ集めてるだけの本だけど、普段からそんな感じの文章が多いので違和感ナシ。対立しつつ相互に媒介され合うことで個々の要素が全体へと揚棄されるベートーベンの音楽は、個が全体に隷属している点で同時代のヘーゲル哲学及び近代社会と同じ構造を持つと考察。哲学者たちと足並みをそろえて世界精神や主体の自律を讃えているように見えるその音楽はしかし、理念に対してユーモアや笑いを忍び込ませて距離を置く。個を抑圧する全体という図式もやがて突き破っていく晩年様式なども専門的な音楽理論を交え細かく分析。2016/07/04