内容説明
日米の決戦前夜、暗躍するスパイX13号こと大和八郎。上海の地で彼を陥れた米国の美少女スパイ・リリアン。南海の大戦で遂に両国の雌雄決する時、二人の運命は!?高周波電波開発の機密、毒瓦斯作成を巡る陰謀、特殊光学レンズ発明の秘密、画期的人力飛行機製作者の復讐…謀略に満ち満ちた間諜小説の数々。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903~67年。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る作品を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた
末國善己[スエクニヨシミ]
1968年広島県生まれ。文芸評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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春
3
スパイ小説としても、時代小説としても楽しめました。いつかきちんと山本周五郎の長編小説を読んでみたいのですが、なかなか手に取れない。普段読み慣れた探偵小説ならば読めるかな…と、このシリーズ読んでいます。2012/08/03
しいかあ
1
「青べか日記」とかと併せて読んで、若い頃の周五郎の生活を色々想像するというマニアックな楽しみ方くらいしか活用の方法が思いつかない探偵小説全集だけど、「うたえ西風」はちょっと面白かった。ひとことで言うと絶対にひねくれない「さぶ」。最初の蟲焼の場面は短篇集「松風の門」に入ってる「月夜の眺め」にやや似た感じで、子供達のたわいない会話を通じてそこにいない康子の人物をきちんと描写している。これは素直にうまいと感じた。こういう人情の機微みたいなものを書くとそれなりのものになるから、やっぱり周五郎なんだなあと感じる。2012/02/21