内容説明
ギリシャ語を母語とせず、イエスの弟子たちに厳しい批判を向けるマルコ。ギリシャ語を母国とし、ユダヤ教の学識豊かなマタイ。正確な訳と厳密な註とで、各々の肉声を甦らせる。
著者等紹介
田川建三[タガワケンゾウ]
新約聖書学者。1935年東京にて生(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
24
こんな日本語訳聖書を待っていた。もったいぶったお上品な文体ではなく無骨で激越なイエスの息遣いが伝わる。逐語訳の現在形の連続がリアルで直接的。圧巻は本文の何倍もの註。共観福音書という護教ドグマから自由になって初めてわかるマタイとマルコの齟齬。イエスに寄り添うマルコとは対照的に自分の教会に都合よく歪曲するマタイを田川は容赦なく論難する。2015/10/16
Koning
4
マルコに関してはやはり流石としか言い様がない。訳注の詳細さはギリシア語をどう読むか?の参考にも成る。例によって田川節が小気味良すぎる訳ですが(w
ヤモリin王宮
2
新約聖書の注解書。最初に私訳が紹介されており、次に詳細な注解があって読みやすい本。なにより、文体が好きです。聖書だからと言って批判することを恐れている注解書はたくさんあるのですが、田川先生は疑いながらも著者の思いを真剣に受け取ろうとしている。言葉の意味もよくわかります。日本語の聖書が聖書原文ではなく外国語の翻訳に忖度していることがよくわかる本。2020/06/07