内容説明
大西巨人が、初めて存分に「わが文学と世界観」を語りつくした待望の書、ついに刊行!気鋭の批評家・鎌田哲哉を聞き手に、文学的信条、愛する作家・芸術家たち、中野重治・花田清輝ら同時代文学者をめぐる鋭利な考察と回想、この国の変わらぬ課題と展望を、縦横に論じる。これは88歳の現役作家が贈る、最高の「文学入門」の書である。
目次
1 『神聖喜劇』、それ以後(「独立小宇宙」への意志;言論・表現公表者の責任 ほか)
2 『神聖喜劇』、それ以前(「短歌的なもの」の受容と批評;保田與重郎について ほか)
3 「様式」の発見、小説の時間(新人賞のこと;再び、『神聖喜劇』について ほか)
4 『深淵』をめぐって(二つの裁判について書く;二度目の失踪の後で ほか)
5 文学と政治(阿部和重と保坂和志;大江健三郎と柄谷行人 ほか)
著者等紹介
大西巨人[オオニシキョジン]
小説家・批評家。1919年、福岡生まれ
鎌田哲哉[カマダテツヤ]
批評家。1963年、北海道生まれ。「丸山眞男論」で第四一回群像新人文学賞を受賞。「重力」編集会議参加者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
23
大西巨人はそんなつもりはなかったのかもしれないけれど、なかなかどうして鎌田哲哉の愚直過ぎる熱を帯びた発言に答える形で自作を語り、秘密を開陳している。『神聖喜劇』や『深淵』『迷宮』が記憶をめぐる物語だったという読みはなるほどと思わされ、『深淵』を読み返したくさせられた。武士が鍔迫り合いを果たすような緊迫感のあるインタヴュー。ただ、大西の方が海千山千越えて来た文学者だけあってやはり一枚上手で、鎌田の読みを誤読といなして鎌田がそこから大西を追い詰めるところまでには至れていない。そこが誠実であると同時に弱いと思う2019/08/08
きいち
17
正しいと信じたら一人でも行く。そうやって軍隊生活にも、政治活動にも、もちろん自らの作品にも対峙してきた大西巨人。もしも自分がインタビューすることができたとしたら、むちゃくちゃ怖い。真剣に生きてないと一瞬で見透かされて、黙殺されてしまう、そんなふうに勝手に思ってしまいそうで。この本で大西に向き合った鎌田が凄いのは、とにかく間違いも誤解も勇み足も恐れずに、向こう傷つけまくりながら話し続けること。20行いって、大西「そうも言えるな」ってどんなインタビューやねん。◇そんな鎌田が可愛くて仕方ない雰囲気の大西もいい。2014/08/09
パブロ
10
インタビューアーの鎌田哲也、テメーはダメだ! 大西巨人という権威に擦り寄ろうとし、なおかつホメてもらおうとヨイショばかりしている発言が多すぎ!! インタビューの面白さって、生い立ちから創作方法まで、小説や評論で難解な思想や、どのようにしてこの人になったかということをわかりやすく読むことができる入門書的な立ち位置だと思っている私。今回の主役・大西巨人はその人となりが謎な人物。どんな本を取り込み、どんな軍隊経験を経て、『神聖喜劇』を書いたのか。それを読みたいのに、その核心を素通りしやがる。ホント、ガッカリ…。2016/06/07
村上直樹
1
「他人がやっとの思いで差し出した好意でも、それ以上を求めるのが当然で、思い通りにならないとすぐ怒り出す。そういう時代になっていると思います。」(P.174)鎌田哲哉が言うと怖い。2013/03/04
aquirax_k
0
自分の中で大西巨人ほどなぞの作家はいない。ダンテに対して拘りがあるのかすらわからない。神性喜劇読み返すか…