内容説明
この“塔”を出るのよ。出逢いが少女を、革命家にする―相原真琴、13歳。「普通」が求められ、息詰まる学校で、彼女は見出した。パパとママと同じように、妥協せずに。相手は、驚天動地、天衣無縫の先天性不思議少年。『氷の海のガレオン』の著者が描く、気高き少年少女の物語。
著者等紹介
木地雅映子[キジカエコ]
1971年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。93年「氷の海のガレオン」が第36回群像新人文学賞優秀作となり、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
26
とてもストレートでダイレクト、そしてパワフルな小説だ。『氷の海のガレオン』の木地雅映子なのだから、あたりまえと言えばあたりまえなのかもしれない。13歳の主人公・真琴は、不思議で特殊な少年・南と出会ったことで、日頃漠然と抱いていた違和感が鮮明になっていく。普通であることを良しとするこの社会は、異端者を普通へ矯正しようとする。正義を持って。けれど、じゃあ「普通」って一体なんだ? 真琴は、そんな実態のない「普通」という名の呪いを解こうとする。革命を起こすのだ。(つづく)2017/06/04
就寝30分前
17
社会に適応できないことは必ずしもハンディにはならない。が、そのためにどれだけの痛みと涙を流さなければならないことか。そしてそれを理解してサポートしてくれる人との奇跡的な出会い。自分はこの物語で染谷君が一番立派だと思う。彼らが中学生という設定には大人びて無理がある、が高校生ではこうはいかない。難しい年齢だな。とても好い本でした。2015/10/10
吉野ヶ里
10
恐ろしく完成度の高い本。読んでいて嘆息してしまう。問題意識というか、怒りの矛先がくっきり一貫しているのに、独善的ではない。「普通」の側にいる人々と外れた側にいる人々はスペクトルであって単純な敵対構造ではない。慧実おばさんの戦い方が役に立つ場合もある。感情や状況の変化が見合ったイベントと対応して起こるので、真琴や南の、少し異常な心理描写に難なく移入できるように組み立てている。木地雅映子の小説は、迫害される子供たちに梯子を降ろすようだ。手を引いてあげることはできないから、自分で生き残りなさい、と。優しい本。2020/07/21
かぼすけ
7
うーん、面白かった。あっという間に引き込まれてこたつで一気読み。周りがテレビゲームで大騒ぎしてても気がそれなかった。少し変わった家系でマセた主人公の女子中学生、軽度発達障がいを抱える男の子、不良少年の革命。2012/01/02
きいち
7
よかった。読み始めたのは昨日だったが、一気によみきってしまった。1Q84をいいと思った人はきっとこっちも読んだほうがいい。本物の世界に出会ってしまったら、長く待ってなんかいられないもの。すっかり真琴や染谷くんに感情移入して読んでいたが、読み終わってしばらくして、自分自体は彗実おばさんやおばあさまと同じ側にいるんだなあと気づいたときは軽くショックだった。あ。でも、タチバナさんのいうように、そこも地続きなんだろうなあ。2011/10/31