内容説明
室町時代以降に描かれた絵画史料とともに、主要な鬼たちの出自や系譜をわかりやすく解説。これ一冊で、日本の鬼のすべてがわかる!
目次
序章 鬼とは
1章 鬼の故郷―大江山
2章 退治された鬼
3章 鬼になった人間
4章 広まった鬼
5章 仏教から生まれた鬼
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shikashika555
48
追儺からだいぶ日が経ってしまったが、鬼の本。 大体が馴染み深いものであるが、驚くようなエピソードも。 例えば大江山の酒呑童子。都からは鬼と呼ばれ排斥され殺されてしまうが首塚があり、童子が首を切られたその日は「鎌止め」と言って刃物を使うのを控える風習が大正の初め頃まであったとか。 祟を恐れたのではなく哀惜の年からの風習に思える。 民話伝承とは、共同体によってなされる供養の形なのかとも思える。 そして地獄の入口の奪衣婆はおなじみだが、ペアで働く懸衣翁(けんいおう)なんて初めて知った!夫婦なんだそうだ。2022/02/22
よこたん
33
“だまし討ちにあって首をはねられた酒呑童子は「鬼に横道なし(鬼は卑怯なことはしない)」と、頼光らを激しく罵ったと伝えられている。” 私の好きな小説の中でも「鬼は嘘はつかない」と言っていたな。悪事を働いても鬼には鬼なりの言い分があるのだろう。有名どころの鬼のオンパレードな一冊。どんな鬼かは鮮やかな絵巻で紹介。橋姫、安達ケ原の鬼婆はぞわりと怖い。一寸法師にやられる鬼は弱虫、に笑う。鬼の敵も対で紹介。酒呑童子と頼光四天王はいろんな物語で読んでいるので複雑な心境に。阿倍仲麻呂が鬼になったというのは初めて聞いた。 2023/11/26
とある内科医
21
図書館ならではで、試し借りしてみた本。桃太郎の鬼や閻魔様も見られる。自分にとって鬼と言えば鬼滅ではなく、カフェド鬼またはドラゴンボールの閻魔様。2022/09/22
テツ
13
本邦における鬼の誕生と遍歴について。そもそもの始まりである鬼は『出雲国風土記』に登場する阿用郷の鬼であるけれど、一つ目のこいつは人間をばりばり食べる。鬼とは徹頭徹尾人に仇をなす存在なのだ。物語として伝わる「良いことを(も)する鬼たち」は姿形が異形であり恐ろしいだけであって本来鬼ではなく、その役割故に鬼のような姿を与えられただけの何かなのだ。この国は鬼と鬼のような何かで満ち満ちている。満ち満ちていた。生きる上で全く役に立たないこうした知識を得ることの純粋な快楽。2023/11/24
jackbdc
9
フルカラーで多様な鬼を味わえる。鬼は原則的に暴力的に人に恐怖を与える象徴的な存在だろう。しかし単に恐怖感情だけを象徴するだけの存在では、約千年からの時代の淘汰を経て今に至る迄語り継がれる事はなかったと思われる。鬼を伴う物語には、近代以降の小説、映画や漫画等と通底する人間存在の機微を味わう要素が強く含まれていると感じた。基督教文化圏における悪魔と比較すると倫理観から離れた俗っぽさを感じなくもない。一方で、純粋な娯楽としてだけではなく政治や宗教権力によるプロパガンダ的な用いられ方の痕跡を探す事も出来そうだ。2022/04/09