内容説明
マリオ・ジャコメッリの写真を、その芸術を、内的で深い詩を、クリエイティブな高揚をめぐる長い旅を提案する。1950年代から写真を撮り始め、2000年にその生涯を閉じたマリオ・ジャコメッリは世界を代表する写真家の一人である。イタリアの小さな村が舞台の“スカンノ”、死にゆくホスピス老人たちを凝視した“死が訪れて君の目に取って代わるだろう”、若き神学生たちを撮った“私には自分の顔を愛撫する手がない”、“死に行く大地”“夜が心を洗い流す”などの代表作はもちろん、最晩年の未発表作品まで、およそ100点余の作品を網羅。7名の識者による評論、子息による詳細な年譜、作家自身が望んだ配列に従った“写真シリーズ”、さらには制作にインスピレーションを与えた詩6篇を含む決定版。寡黙なる宿命の大地虚無と孤独実存を突き刺す深淵の世界…。モノクロームと強烈なコントラストで「生」と「死」のあいだを往還する作品。
目次
マリオ・ジャコメッリもしくは1925年生まれの若者と1968年生まれの息子の思い出
評論、写真
身体としての風景
ジャコメッリのリアリズム
ひとに寄り添って―あるいは生と死の境の世界
“簡素こそ豊穣”な世界のなかで
現実とその痕跡
詩(そして哲学)としての写真
カオスからカオスへ
シリーズ
詩および参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青猫
3
ジャコメッリの写真集が日本語で入手出来て感無量。多少画質の荒いところも見受けられるけれど、申し分ないボリュームです。経歴、評論も充実。目下のところ宝物扱い。「スカンノ」「ルルド」「死がやってきてお前の目を奪うだろう」「私にはこの顔を撫でてくれる手がない」「男、女、愛」「善き大地」「新しい移民たちの歌」「蝶のゆるやかな飛翔」「雪の劇場」「シルヴィアへ」「夜は心を洗う」「私は誰でもない」「自然についての認識」などの連作から100余点が掲載されています。2009/12/09
deerglove
2
たまたま図書館で手にして、すっかり魅了されました。白と黒の魔法。イタリアの肥沃な土地が織りなす幾何学模様。死に向かうホスピスの人々。愛し合う恋人たち。はしゃぐ神学校の学生。文中の評論家がいう通り、「ジャコメッリは自分の土地から形象をとり出して記号に変えていったのだ」と。なるほど。2015/08/28
蘇芳
1
ジャコメッリを最初に見たのは恵比寿の写真美術館で。この時は彼の代表作が主だったので今回の作品集で全体像がつかめた。主要作品も含まれており、この一冊で十二分の内容になっている。2016/05/28
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