感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
5
いうまでもなく著者の前田愛氏は、日本近代史のレジェンドであるが、中でも本書は、珠玉の短編が集められた永遠の名著だ。本書に収められた「日比谷焼打ちの『仕掛人』」という論文は、日本最初の民衆的デモと語られる日比谷焼打ち事件が、じつは時の権力者によって周到に仕組まれた扇動作戦であり、後の東アジアでの工作活動の予備訓練の意味合いすらあったことを仮説する。右翼・左翼問わず、我々が日常的にメディアやTwitterで接する政治論が、いかにナイーブな床屋政談であるかを痛いほど知ることになるだろう。探偵小説的な筆致も魅力。2020/08/05