内容説明
パンデミックや戦争など超現実的とも思える事態が起きている現実世界と対峙しつつ、カフカの小篇を読む。エッセイ集『ことばへの気づき』(2021年)続篇。
目次
第1部 現実と非現実の境を行き交う(「商人」―膝をかがめて細い鏡をのぞきこむ;「天井桟敷にて」―“止めろ”と渾身の叫びを上げるやも知れない;「隣人」―ハラスは、いつも非常に急いでいて ほか)
第2部 脇に身を置いて眺める(「小さな寓話」―この長い壁がみるまに合わさってきて;「根気だめしのおもちゃ」―球の意見によると…;「もどり道」―心の影は消えてくれない ほか)
第3部 終わらないように終わる(「こま」―不器用な鞭で叩かれたこまのように、彼はよろめいた;「皇帝の使者」―使者はなんと空しくもがいていることだろう;「出発」―遠くから、喇叭の音が聞こえてきた ほか)
著者等紹介
松原好次[マツバラコウジ]
東京外国語大学外国語学部ドイツ語学科卒業。元電気通信大学教授。専門は言語社会学、言語政策。特に、少数民族言語(先住民族や移民の言語)の衰退・再活性化について研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青柳
5
カフカの小篇小説を著者の解釈で辿っていくエッセイ集の本です。無数にあるカフカの小篇を訳者ごとの違いや原語での意味合い、執筆当時の状況など様々な観点から分析し、寓話めいたストーリーを解読していきます。解読された小篇は本作に(ほぼ)全文が抜き出す形で紹介されているので、収録された小篇作を前もって読んでいなくても大丈夫です。カフカの評論本はM・ロベール、坂内正のものを読んでいたのですが、エッセイということもあり、身近な生活の例などからストーリーを解体しようとしていて分かりやすい文章でした。おすすめです。2024/01/06