内容説明
1859年、音楽史家・批評家のフランツ・ブレンデルによって提唱された「新ドイツ派」は、19世紀の西洋音楽研究史上、もっとも複雑で錯綜した用語の一つに数えられている。この一派が音楽史におけるどの現象を、いずれの人物を指しているのか、という基本的事項が曖昧のまま残されてきたからである。新ドイツ派とは何か。この用語が指し示すのは誰か。「新ドイツ」の名称はなぜ生み出され、その概念はどのようにして成立したのか。本書はこのような根本問題を解明するために、「新ドイツ派」の前身とされた1850年代の「未来音楽」から概念を説き起こし、一派提唱の歴史的経緯とその後20世紀初頭の音楽史記述に至るまでの広範な関係資料を追う。
目次
第1章 音楽史研究と「新ドイツ派」(音楽事典における「新ドイツ派」;「新ドイツ派」概念に関する先行研究 ほか)
第2章 「未来音楽」の概念(「未来音楽」の由来に関する諸説;1850年代ドイツ語圏における「未来音楽Zukunftsmusik」 ほか)
第3章 「新ドイツ派」の提唱(第1回音楽家集会の開幕;ブレンデルによる「新ドイツ派」提唱 ほか)
第4章 「新ドイツ派」概念の変化(「新ドイツ派」提唱の反応;ベルリオーズによる反「未来音楽」の声明 ほか)
第5章 「新ドイツ派」の発展(新生「新ドイツ派」の成立;「全ドイツ音楽協会」の設立(1861) ほか)
著者等紹介
上山典子[カミヤマノリコ]
東京芸術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院博士課程修了、博士(音楽学)。現在静岡文化芸術大学准教授。専門は西洋音楽史、とくにリストと19世紀の音楽文化、ピアノ編曲の文化史など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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