感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
39
歴史書であるところの『三国志』の世界を、"最強の男"と言うキーワードから小説『三国志演義』への変貌を読み解く。三国志で最強と言えば、呂布奉先。歴史書の中での彼と小説の中での彼の持つ役割の違い、最強度数(?)の違いなどを追う。なかなかに読みごたえあり。★★★★☆2021/01/08
サケ太
21
「一瞬天下に近づいた男」呂布。何故この男は、「最強」になり得たのか。日本では当たり前に語られる最強の呂布像はどこで生まれたのか。不勉強なので、「演義」成立と「正史」の成立(百三十年後に訳注が付けられた)に千年以上の差があること、その間に「平話」があることを知らなかった。胡軫の足を引っ張った正史から、「独戦呂布」の平話、それが削られて最強となった演義。貂蝉、赤兎馬、方天画戟、李粛から、呂布に与えられた役割が語られる。転生する英雄、与えられた虚像。解き明かされていく、最強という幻想の姿。好奇心を刺激される一冊2020/10/16
さとうしん
12
三国志ファンから打ち棄てられてきた演義を読み込む面白さを、呂布をめぐる議論を中心に語っていく。「最強の男」という評価は演義の作為によって結果論的に生じたものであること、李粛との関係から、呂布が物語世界の中で薛仁貴と対になる存在とされていたのではないかという指摘は面白い。呂布の位置づけ、付章で問題にされる「四大奇書」概念や毛本の評価など、「虚偽」が本書を貫くテーマである。2020/10/05
BIN
9
三国志で最強の男といえば誰もが呂布と思いますが、正史にはそんな記述はない。どのように最強の男が生まれたのか三国志演義やその前の平話や雑劇等を分析してます。本書に影響されて三国劇翻訳集を購入してしまった。李粛で1章とかちょっとびっくり。多くの三国志オタクが通る道は演義(横山、吉川)→正史になりますが、正史の知識をもってもう一度演義に戻ろうという趣旨もあります。三国志オタクにもオススメできる一作。2021/08/06
Toska
4
呂布を通して見る『三国志演義』の作り方。実在した呂布の人物像に、意外なほどたくさんの要素がトッピングされていた。とりわけ、貂蝉との絡みが面白い(まさか夫婦再会説があったとは)。呂布は髭のない若々しい姿で描かれることが多く、昔からそれが不思議だったのだが、もともと貴公子としての属性を持たされていたものらしい。2022/09/16