文化遺産はだれのものか―トルコ・アナトリア諸文明の遺物をめぐる所有と保護

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  • サイズ A5判/ページ数 317p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784861105487
  • NDC分類 709.266
  • Cコード C0039

出版社内容情報

過去の痕跡はいかにして「文化遺産」となるのか。様々な遺跡が重層的に残るトルコの遺物をめぐる言説から、文化遺産概念を問い直す。

序章 文化財をめぐるローカルとグローバル
第1章 2種類の「トルコ人」
 1 はじめに
 2 トルコにおける文化遺産保護に関する法制度の歴史
 3 文化遺産保護と古美術品取引に関する現在の法制
 4 古美術品の国外流出の問題
 5 考古学的な発見の文脈における場所の重要性
 6 「発見された場所」としてのトルコ
 7 「密売人」と合法な個人コレクターの対比
 8 過去への「愛」を通した保護
 9 文化遺産を守ることとその空間的境界
 10 「発見された場所」と文化遺産の保護

第2章 トルコ人とトロイ人―文化遺産と国民国家の「国土」
 1 はじめに
 2 国民国家の「国土」の形成と文化遺産
 3 現代トルコ・ナショナリズムとアナトリア
 4 オスマン帝国社会の多文化的状況の抹消
 5 トルコ人とヒッタイト人
 6 「青きアナトリア」
 7 トロイ人の子孫としてのトルコ人
 8 均質ではない「国土」

第3章 「歴史はその場所でもっとも正しく理解される」―トルコにおける文化遺産の返還問題
 1 はじめに
 2 文化遺産をめぐる議論における「所有」
 3 文化遺産の所有と「場所」
 4 国外に流出した文化遺産の返還の取り組み
 5 「クロイソス王の財宝(Karun Hazinesi)」の返還
 6 ペルガモンのゼウス祭壇の返還運動
 7 「休息するヘラクレス」像の結合
 8 「石はそこにあるからこそ重みがある(Ta? yerinde a??rd?r)」
 9 「場所」、「民族性」と文化遺産の返還
 10 「発見された場所」と、文化遺産をめぐる問題の国際性

第4章 自明の理としての「保護」
 1 はじめに
 2 UNESCOと「文化の多様性(Cultural Diversity)」
 3 UNESCOの文化観、文化遺産概念とその問題
 4 文化遺産をめぐる「グローバル」と「ローカル」の対立
 5 文化遺産の保護が作り出すヒエラルキー
 6 自明の理としての「保護」

第5章 状況に応じた文化遺産の保護と破壊
 1 はじめに
 2 文化遺産概念と保護と破壊の区別
 3 トルコにおける開発事業による文化遺産の破壊
 4 水没寸前の遺跡からのモザイク画の発見
 5 国外での報道をきっかけとしたモザイク画への関心の高まり
 6 文化遺産に対する所有意識と、モザイク画の保護
 7 「破壊」を展示する
 8 「ジプシーの少女」とその不完全性
 9 文化遺産の破壊と保護の関係

結びにかえて

田中英資[タナカエイスケ]
田中英資(たなか・えいすけ)
1975年生まれ。ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程修了(PhD)。
専門は社会人類学、文化遺産研究。2011年より福岡女学院大学人文学部准教授。

内容説明

トロイ遺跡はギリシャのもの?トルコのもの?それとも人類共通の遺産?さまざまな時代と民族の遺物が重層的に残り、文化遺産の盗掘や返還の問題を抱えたトルコ。政府・研究者・メディア・コレクター・UNESCO等、遺物をめぐる国内外の主張から、“文化遺産”という概念を問い直す。

目次

序章 文化遺産をめぐるローカルとグローバル
第1章 2種類の「トルコ人」
第2章 トルコ人とトロイ人―文化遺産と国民国家の「国土」
第3章 「歴史はその場所でもっとも正しく理解される」―トルコにおける文化遺産の返還問題
第4章 自明の理としての「保護」
第5章 状況に応じた文化遺産の保護と破壊

著者等紹介

田中英資[タナカエイスケ]
1975年生まれ。ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程修了(PhD)。専門は社会人類学、文化遺産研究。2011年より福岡女学院大学人文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

崩紫サロメ

16
古代遺跡や遺物などの文化遺産はその帰属を巡り、様々な論争を生んでいる。本書はアナトリア、つまり「トルコらしくない」にも関わらずトルコ共和国に属する地域の文化遺産のあり方を通して、国民意識形成やグローバルな関係について考察した博士論文である。「石はそこにあるからこそ重みがある」としてトルコ政府はオスマン帝国・トルコ共和国時代に流出した文化財の返還を求めているが、そこには国内外の様々な利害集団が関わっている関わっていると指摘。ダム建設で水没したゼウグマ遺跡の問題を通して保護と破壊の問題を考察する。2020/09/25

ぞだぐぁ

1
トルコ政府の文化財保護・奪還方針を実例合わせて解説している本。文化財が元々あった土地と関連させるコンテクストは分かるのだが、人類の遺産と言う考えだと多くの人がアクセスしやすく保存技術が進展していることを考えると反論の余地も残る。2017/05/12

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