内容説明
“オリンピックの成否は西洋の基準で判断される。…マナー、秩序、外国人のもてなしなどの文化的な面において、西洋の基準を適用し、その基準に合わせるための努力が施されてきた”戦前・戦後、身体、アイデンティティと歴史、大衆消費社会、アメリカ、ナショナリズム、天皇制を補助線に、時代を鋭敏に受け止め行動した三島の作品を考察する。
目次
第1章 三島由紀夫「憂国」における一九三六年と一九六〇年―不満から矛盾へ
第2章 三島由紀夫「十日の菊」における同一化への眼差し―“見られる”肉体の美学
第3章 三島由紀夫『美しい星』における“想像された起源”―純潔イデオロギーと純血主義
第4章 三島由紀夫と大衆消費文化―「自動車」「可哀さうなパパ」を中心に
第5章 「下らない」安全な戦後日本への抵抗―三島由紀夫「剣」における戦後日本の表象
第6章 三島由紀夫と一九六四年東京オリンピック―国際化と日本伝統の狭間で
第7章 “現人神”と大衆天皇制との距離―「英霊の声」を中心に
著者等紹介
洪潤杓[ホンユンピョ]
1974年、韓国・春川生まれ。2000年、韓国・高麗大学校日語日文学科卒業。2009年、筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了。博士(文学)取得。高麗大学校非常勤講師、同大学のBK21中日言語文化教育研究団研究教授を経て、誠信女子大学校日語日文学科助教授。専門、日本近現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
2
戦後の終わりは70年の三島由紀夫による割腹事件だとする説がある。戦前の絶対的価値観であった天皇の復活を主張しながら自決したからだ。61年から66年の間、「憂国」「十日の菊」「英霊の声」の二・二六事件三部作が発表された頃、安保闘争、東京五輪、高度経済成長による大衆消費社会の成立などと重なった。安保闘争から左寄りに転じた世論を憂えた結果が「憂国」を産んだともいえる。現人神であった天皇が人間宣言し、皇太子と民間人との結婚までを垣間見た三島は陛下のために死んでいった兵士のため「英霊の声」を書くしかなかったのだ。2015/11/04
marino
0
趣味のいいほんだとおもった。三島さんって、「いただきますだけはいいって」って真顔で言ってきそうなひと。2022/03/13