内容説明
人は死を超えられるか―戸籍の謎を、一人の現代作家の作品を通して解き明かす。
目次
女Aの戸籍物語
第1部(戸籍制度のある国―『彼方へ』、「初旅」;『年の残り』―死者たちの残照を秘して;『横しぐれ』から「樹影譚」へ―読者である作者)
第2部(徴兵制のあった国;『笹まくら』―この空白だらけの社会;『裏声で歌へ君が代』の裏にあるもの―徴兵忌避と四人の男;『女ざかり』―いいかげんな国家のいいかげんな小説)
第3部(『輝く日の宮』―作者という幽霊、読者という未来;『持ち重りする薔薇の花』―ヴァニラ・アイスクリームにシェリーをかけて)
死すべきものの彼方―四季と写真に関する考察
著者等紹介
ソーントン不破直子[ソーントンフワナオコ]
1943年生まれ。日本女子大学文学部英文学科卒。米国インディアナ大学にて比較文学の修士号と博士号を取得。日本女子大学文学部英文学科教授を経て、同大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナハチガル
11
再読の再挫折。丸谷才一訳のユリシーズを読み始めて、ふと思い出して読んでみた。半生を振り返った冒頭の語り口が素晴らしく、膨大な知識と調査に裏打ちされた本編も実に盤石なのだが、こちとらなにしろ丸谷才一の作品を一本も読んだことがないので(それでも分かるように書かれてはいるが)、もうひとつ壁を超えて行こうという気になれなかった。残念。「循環と直線という相容れない志向の形式を、社会制度という現実的なものの中にいわば止揚したのが日本の戸籍であると私は思うからである」。2022/12/09
ロータス
4
第一部の「戸籍制度のある国」は少々退屈だったが、第二部「徴兵制のあった国」から俄然面白くなった。特に『笹まくら』を論じる手法が独特で、漱石も徴兵忌避者であったと考える丸谷才一の『こころ』『吾輩は猫である』論からの読解が新鮮。最近「村上春樹の『羊をめぐる冒険』の羊男は徴兵忌避者だった」とする言説を読んだばかりの私は興奮せざるを得なかった。また『裏声で歌へ君が代』についての「丸谷才一は吉行淳之介になる必要はないのである」という皮肉には笑った。哲学、古典、歴史と詰め込みすぎの感もあるが無視できない論考だ。2021/01/05
Akito Yoshiue
0
かなりの労作。2014/01/10
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